2021/11/30
小ロット多デザインを支える最後の決め手は、職人の「手」でした。
アーティストの作品を生地に精細に染め上げた後、製品として最後の工程を担うのが裁断と縫製です。FAVORRICが目指す小ロット多デザインを実現するためには、1点1点丁寧に仕上げる職人の技能と、そんなものづくりに共感してくれる縫製職人たちとの出会いが不可欠でした。
京都西京区。
京友禅の伝統を汲む縫製職人の里。
「京都はね、分業なんです。」
と「染め」の技術者が語ってくれたように、生地を製品に仕上げる「裁断」と「縫製」の技術者たちも京都の街の中に点在しています。
FAVORRICの製品を支えてくれているのは、西京区にある縫製工房。名産でもある柿の木がそこかしこに茂るのどかな場所に、その工房はありました。
「京都の布ものと言えば、京友禅と西陣織。このあたりは京友禅の縫製が盛んで、比較的薄い生地の袋物なんかが盛んにつくられていた地域です。今、うちでやってくれている職人さんたちもみんなこのあたりに住まれているんですよ。」と語る縫製工房の代表者。
薄ものと呼ばれる縫製を得意とするこの工房で、FAVORRICのキッチンクロスやティータオル、ランチョンマットなどがつくられています。
この工房との出会いがなければFAVORRICは誕生し得なかった。FAVORRICの担当者もそう語るのはどこに理由があるのか。
「私どもはもともとほとんど機械裁断をせず、一点一点手で断っているんですね。FAVORRICさんの生地は、ひとつの生地の中に実にたくさんの絵柄が染められているので、それを断ってゆくためには機械でドーンと断つのではなくて、ひとつひとつ確認しながらやっていかないといけない。それをやるにはうちのやり方しかなかったんじゃないでしょうか。でも、はっきり言って大変なんですよ。1枚1枚裁断するときに、この絵柄は何、この絵柄の向きはどっち、すべて覚えてやっていく。普通は同じ工程を繰り返すことになるので、覚えることや確認することが多いんです。」
その中の絵や柄を一から覚えて、向きや形を確認しながら一点一点裁断する。求められるのは技術の確かさとスピード、そして多デザインへの柔軟な対応。それは一口に言えばどのような仕事だったのでしょうか。
「まあ、縫製の側から正直に言えば『嫌な案件』ですよね。1枚断ちをして柄を合わせてと、縫製をやる前にやることが多い。でももう慣れてしまいましたね。(笑)」
「思ってもいない事態が起こってしまうこともあるんですが、生地が滋賀で染めが京都で、このあたりでまとめてくださっているので、互いに行き来して解決できる。このあたりにまとめてくださっているのは、そういう意味ではありがたいですね。」
日本の繊維産業を長く支えてきた滋賀、京都。その地域に残る国産の高い技術をもったメーカーや工房で、熟練者たちのサプライチェーンを築き上げることで生まれたFAVORRICの製品。
しかし、ここまで通常より手間のかかる仕事を引き受けてくれた理由は何だったのでしょうか。
「小ロットでできるだけ多くのデザインを用意して、いずれはバイオーダーでやって行くことを目指したいってね、ふつうロスが大きくてやる人いないですよね。最初、お電話でお話し伺った時はまあ、大変なことしようとしてるんだなと思いましたけど。お話が煮詰まる前にいきなり担当の方が訪ねて来られてね 『こういうのしたいんです!』って、驚きましたね。(笑) 熱意も感じましたし、新しくて面白いなと。」
ふつうやる人いない。手間もかかるし問題も起こる。
でもだからこそ、新しくて面白い。職人の技術と心意気が縫い上げるFAVORRICの製品。そのクオリティをお確かめください。