FAVORRIC編集者
2024-05-28
日本画とは?特徴や洋画との違い、特有の画材について解説します
日本画とは、様々な絵画のジャンルがある中で、日本の歴史や風景、風俗に根ざして描かれたものです。日本画と聞くと、和紙に墨や鉱物などの画材で描かれた風景画や美人画、動植物の絵などを思い浮かべる方も多いでしょう。実際に「日本画とはどういう絵画?」と聞かれて、しっかりとした説明ができる方は多くないかもしれません。
絵画に詳しくないという方の中には、墨で描かれた掛け軸を見て、日本画と中国画の区別がつかないと感じてしまう方もいるかもしれませんね。
日本画にはどのような特徴があるのでしょうか?西洋画との違い、使用される画材など、日本画とはどのような絵画なのか、わかりやすく解説します!
目次
- 日本画とは
- 日本画の画材
- 日本画には日本の歴史と伝統が詰まっている!
日本画とは
古くから日本で描かれていた絵画は、実は明治時代以前の国内では「日本画」とは呼ばれていませんでした。日本画という概念が生まれたのは明治時代に入ってからです。日本画とは、鎖国が明けて海外から西洋画が日本に入ってくるようになり、それらと日本で描かれた絵を区別するために生まれた、比較的新しい概念なのです。
では、明治時代まで日本画はなんと呼ばれていたのでしょう。その頃の絵画様式の種類として、室町時代から桃山時代に隆盛を誇った狩野派、江戸時代に人気を博した円山・四条派、また大和絵などと呼ばれていました。日本は島国で、他国との交流がそれほど盛んでなかったので、海外の絵画様式と比べる機会がほとんどありませんでした。
そんな日本画の特徴や、洋画との違いを説明します。
日本画の特徴
寺社仏閣やお城などの史跡に見られる屏風絵・天井画・襖絵、葛飾北斎や歌川広重などで人気の浮世絵、円山・四条派や狩野派といった有名絵師が描いた絵画などがあります。これらは、ひと目見て日本画であると分かりますよね。しかし、現代の日本画の中には、一見、西洋画に見えるものも多くあり、混乱してしまうことも多いでしょう。
現代では、日本画に西洋画の様式を取り入れたり、西洋画に日本画の画材や様式を取り入れたりと、臨機応変に進化を続ける中で、かなり概念が曖昧になってきているようです。日本画とは、日本画の様式を取り入れて描いたものと定義する場合もあれば、日本人が描いた絵画ならすべて日本画であると言われたこともあるようです。
現在では、「日本画特有の画材で描かれたもの」を日本画とするという解釈が一般的になっているようです。
日本画と洋画の主な違い
「日本画」という概念自体が、鎖国が終わって日本に西洋の物が入るようになった明治時代に、西洋画と日本画との区別をするために生まれたものです。その概念が生まれた明治時代には、「日本に元からあった絵画」と「海外から入ってきた絵画」との間に明確な違いがありました。それは画材であり、風景や風俗であり、画家の国籍であるなど、とても分かりやすいものでした。
しかし、海外の絵画の良いところを取り入れて融合していくうちに、違いは曖昧になっていきます。現代でも多くの日本画が描かれていますが、中には構図や技法は西洋画に寄せつつ、日本の風景・人物・習俗などを題材にして、日本画の画材を使って描いた絵画もあり、境目は曖昧です。
ただはっきりとした違いがあるとすれば、使う画材だと言えるでしょう。普段あまり絵画に触れない方は一見して違いを見分けるのが難しいと感じるかもしれませんが、西洋画と日本画では使う画材に大きな違いがあります。日本画特有の画材を詳しく知ることで、見分けることもできるようになるかもしれません。
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日本画の画材
絵画といえば、画用紙やキャンバスに水彩や油彩などの絵の具を使って絵を描くイメージを抱く方は多いでしょう。けれども、日本画の場合に使う画材は、それらとはまったく違い、平安時代からある伝統的な日本画特有の材料を使っています。
日本人なのに、なぜか日本画の作成工程を学校で詳しく教わることはありません。どのように描いているのかもほとんど知らないという方は多いでしょう。日本画独特の筆致や風合いがどのような材料によって描かれているのか、画材について詳しく説明していきましょう。
和紙・絹
絵を描く媒体のことを「基底材(きていざい)」と呼びます。日本画の基底材は主に和紙や絹が使われます。一方、西洋画はキャンパスや水彩紙が使われるという違いがあります。
西洋画の基底材として使われる紙ではなく、日本画で和紙や絹が使われるのは、日本画で使われる岩絵具や、にかわは乾くと固くなる性質があるからです。厚みがあり繊維が短めの洋紙では、ヒビが入りやすく、そこから顔料が剥離してしまう恐れが高くなってしまいます。
対して、和紙や絹は薄く繊維が長めでしなやかなので耐久性に優れており、日本画の顔料との相性がいいのです。歴史としては絹の方が長く使われていますが、現代では和紙を使用することが多くなっています。
岩絵具
元来、日本画では、天然鉱石を砕いて粉にしたものを、にかわ液に溶かし、絹や和紙に描いていました。現代では岩絵具には以下の3種類があります。
岩絵具の種類 | 詳細 |
---|---|
天然岩絵具 | 天然鉱石を砕いて作られた絵の具。 孔雀石からできる緑青(ろくしょう)・藍銅鉱(らんどうこう)からできる群青・金茶石からできる金茶・辰砂鉱からできる辰砂(しんしゃ)などがある。 色数が少なく高価。けれども色に深みが出る。 石を焼くことで色味に変化が出るものもある。 |
新岩絵具 | ガラスに金属酸化物を加え人工石を作り、それを砕いて作られた絵の具。 天然岩絵具よりも安価で色数が多く、中間色を作ることができる。 |
合成岩絵具 | 水晶末や方解末を染料で着色した絵の具。 天然岩絵具よりも安価で色数が多く、中間色や蛍光色なども作ることができる。 |
砕いた粒子が細かいほど色味が薄くなり、塗り重ねることで色味が鮮やかになりますが、重ねるほどに硬度が増すため、掛け軸などの巻物には厚塗りが向きません。
墨
現代において「墨」というと、学校の習字の授業で使用する墨汁をイメージする方も多いかもしれませんね。しかし、日本画で言う墨は硯に水を垂らし磨って使う固形墨のことです。固形墨は、木を燃やしてできた煤をにかわで練り固め、木型に入れて成形したものを乾燥させて作ります。磨れば磨るほど墨色を濃くすることができ、自分で濃度を調節することができます。
胡粉
日本では貝殻を砕いて精製したものを使用していますが、鎌倉時代頃までは鉛白を使用していました。「胡の国(ペルシア)から伝来した粉」が語源となっています。白色染料で、「いたぼ牡蠣」から精製されたものが上質な胡粉として人気です。岩絵具同様、にかわで溶かし定着させることで絵の具として使います。
白色絵の具だけでなく、岩絵具などと混ぜて混色用に使ったり、発色を良くするための下地材として使ったり、他にも盛り上げ材として使えるなど、様々な用途があります。
にかわ
岩絵具や胡粉、金箔など、日本画の絵の具はそれだけでは基底材に定着することができません。そのため、にかわに溶かして使うことで、にかわが接着剤となって絵の具として使用することができるようになります。
にかわは獣や魚の皮や骨、腱などを煮出して取れたコラーゲンを濃縮し、固めて乾燥したものを使用します。日本画では細長く固められた三千本膠を使用することが多く、細かく砕いて水でふやかしてから湯煎で溶かし、ガーゼで濾したものを使います。
日本画には日本の歴史と伝統が詰まっている!
一見、日本画と西洋画の違いは曖昧で分かりづらいものですが、日本画は「日本画特有の画材を使って描かれた絵」という解釈が一般的です。改めて日本画に使っている画材を見ていくと、西洋画で使用されている画材とは大きく違っているのが分かります。
日本画で使用される画材の歴史はとても古く、日本画の歴史を遡ると平安時代まで、顔料に至っては古墳時代まで遡ることができるのです。日本画には日本の歴史と伝統が詰まっていると言えるでしょう。これからも、日本の絵画を大事に楽しんでいきたいですね。
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