アーティストインタビュー vol.11 千野六久
2022/7/1
フェイバリック参加アーティストVol.11
日常にあるものを独特の世界観を通して描かれた作品は、ユニークでありながら色鮮やかな作品が魅力的なイラストレーター、千野六久。
千野六久プロフィール
画家、イラストレーター。1974年山梨県生まれ。
板前、パチンコ屋、ネジ工場など様々な職を経たのち東京に出る。この時の職場経験が創作活動のテーマとなる事が多い。
2007年セツ・モードセミナー入学。その頃から都内各所の街頭でライブペインティングを始める。そこから飲食店での絵画の展示やギャラリーでの展示の機会を得、台北でのアートフェアの参加やオレゴン州ポートランドにて個展を開催。
自身の実体験を生かし日常の身近な題材を描く。ドローイングやペインティング、彫刻など様々な手法を用いてダークでありながら肩の力の抜けたユニークな表現で作品を発表している。
<提供作品>
ICON
ASK
ON MARS
NIGHT MARE
FALSE
『永遠の素人』でありたい。ただ素直に、興味の行き着く先へ。
-ドローイング、立体造形など様々な手法で常に創作活動をされている印象なのですが、何がメインであるとか、あるいはメインと思うような意識はないのか?そのあたりはどのようにお考えでしょうか?
千野さん
「なるべくその手ぶらがいいって言うか。本格的に制作活動を始めるまでは力仕事したりとか、そういう感じだったので、都度何かできることで手を動かしたいっていうのがまずあるんですよね。なもんで、その時々でこう素材が変わるって感じで。絵の具だったり、または布とか生地だったりとか、、、
設備を整えてやりたいかって言ったら、あんまりそうでもないんですよ。動画を始めたのも僕自身がYOUTUBEを見るのが好きで。そんな感じで手軽に見てもらいたい、そういうコンテンツを自分で作りたいみたいな理由で。
何にせよ、その道の先生、その道の大家の方がいるので、そういう感じとは一線を画した自分のジャンルでやっています。一生懸命取り繕っても見る人が見るとやっぱり分かっちゃう。言葉が悪いかもですが、『永遠の素人』みたいな。そういう存在でいたい。子供の時に漫画が好きで、何かをひたすら模写していた、それをまだ引きずってる感じですね。」
30歳で訪れた、表現欲求のダムの決壊。
「動画でキースヘリングの、グラフティじゃなくて黒板にチョークで自分の絵を描くっていうやつを見て、すごく格好良くて。そういうパフォーマンスアートみたいな感じいいなと思ったんですが、例えばグラフティだと人の家や道路に描くのって迷惑だなーと。これは性格なんですけど。(笑)で、何かできないかなと思って、ロール紙を、道に広げてそこにひたすらに描いていたんです。そんなことしてると結構声かけてくれる人がいて。何か一緒にやりたいとか人も増えて。その中で色々、声が掛かって今に至るという感じですね。そういう活動って、やったらやったで大変だと思い30歳までは自分でブレーキをかけていたんです。一応、まともな感じで過ごしていたんですけど、それ以降、やっちゃえ!になって。色々とタガが外れたって感じで。ダムの決壊ですね。表現欲求のダムの決壊。見てもらいたいというか、溢れちゃった。(笑)」
影響を受けた先人は、沢野ひとし、なぎらけんいち。
-創作する上で大切にされていることは何でしょうか?
千野さん
「自分の中では、その時の思いつき。軽い感じをそのまま出していきたいなと。あとは人への興味ですよね。変な人って結構いるじゃないですか。でも、そういうのをやっぱり日々いろいろある中でみんなスルーしちゃうじゃないですか。でも、そこも見逃せないに強い個性があって、そういうおじさんとか。男性女性関わらず、なんとか、見つけて残したい。この感覚ってなぎらけんいちさんの漫談(※ライブのMC)で、習得したんです。
『川で鯉を散歩させていたおじさんがいた』っていう話があって。(笑)そんな人いないよって思うんだけど、いないっていうのは俺の浅はかな、俺の目線の低さ(笑)なんだな、感度を上げなきゃなと。
だから作家として大事にしているのは『よく見ること』かもしれません。作家の目。何を見ているのか。そういうのを大事にしています。」
「沢野ひとしさんは、もともと椎名誠さんの自伝小説みたいなとこから入って。変な奴がいるみたいな紹介のされ方で。自分の価値観の狭さ、凝り固まった価値観みたいなものをとっぱらってくれた、そういう存在です。締め切りに間に合わなくて急にいなくなっちゃって、『沢野が逃げたぞー』みたいになるとか。この真面目に生きなきゃいけないみたいな世の中で、ちゃんとしなくても人って人を導けるんだな、それはなかなかいいなと。もう救世主でした。」
創作の原動力は、ストレス。ストレスに対抗しようとする精神。
-フェイバリックとの取り組みの中での質問になります。特に特徴的な作品として挙げられているのが「ON MARS」という作品ですが、その意図はどのようなものでしょうか?
千野さん
「これは、なんかもう、いや嫌になっちゃって、地球が。(笑)火星に行きたいなって時期があったんです。この世に生きて受ける、受け続けているストレスが原動力になっています。ストレスに対するアンサーが、こういう絵になっている。」
-『ICON』もSNS上でとめどなく押し寄せるアイコンという意味だとおっしゃっていますが、それも原動力となるストレスということでしょうか?
千野さん
「うん、すごい見ちゃうんですよSNS。見なきゃいいのに。その状況ってなかなか面白い。つらいんですけど、見ちゃって、色々な情報に晒されちゃう。そのストレスの表現って、誰もニーズはないかもしれない。でも、そういう意識で世に残す。作り手としては結構面白い。」
−今回フェイバリックとの取り組み参加された理由や、フェイバリックの事業についての印象などお聞かせください。
千野さん
「僕の中で、その全然違うジャンルというか、人達だったんで。そういう人と何か一緒に何かできるっていう機会を、単純に面白いと思って、それが一番ですね。で、いろいろお話を聞いたら事業がまだ始まってなくて、これからやります。一緒にどうですかってことだったんで、タイミングがめっちゃいいなと。自分もそういう、ゼロから始めるとか好きなので。また、皆さんすごく真面目にお話してくれて、そこに安心感ありました。」
『ICON』
きょうもぼくのタイムラインには沢山のアイコンが流れてくる。ひとつひとつ確認して今日も一日が終わる。2019年作・紙にアクリル絵の具
『ASK』
自問自答してみてと人は言うけれどそこに答えはあるのかな?2019年作・紙にアクリル絵の具、マーカー、色鉛筆
『ON MARS』
レイジ聴きながら気分良く散歩していたら、変な奴らがオレの家に侵入していて最悪。2019年作・紙にアクリル絵の具
『NIGHT MARE』
高熱の時によく見る夢2019年作・紙にアクリル絵の具
『FALSE』
とても良く無い状況だ。そんな時にヤツはニコニコとフレンドリーに近づいてくるので直ぐに私たちは騙される。2019年作・紙にアクリル絵の具