アーティストインタビューVol.14 山口聡一
2022/9/26
フェイバリック参加アーティストVol.14
絵の具の重なり、絵を描くプロセスを解釈し、独特の立体構成、視覚的な効果が魅力的な絵画を制作する気鋭のアーティスト。
山口聡一プロフィール
1983年 千葉県生まれ
2010年 東京芸術大学油画大学院修了
2006年 GEISAI#9金賞、hiromi yoshii賞受賞
2008年 モスクワビエンナーレ参加
2013年 DKNY artworks参加
など国内外で個展、グループ展で主に絵画作品を中心に発表している。
絵画の画面上で起こっている、絵画の完成までの絵具の重なりに焦点を当てたOverlap of paint シリーズを通して絵画の構造自体に興味を持ち制作に取り組む。
<提供作品>
Overlap of paint(dot3)
Overlap of paint(Face)
Overlap of paint(Mona Lisa)
Overlap of paint(Untyu Fuji)
平面と思われている絵画の中に、
絵の具の重なりという3次元性を表現する
「絵って2次元の平面的なイメージと言われることが多いと思うんですが、実際、自分の中では絵の具っていう3Dの、すごく細かい要素になっちゃうんですけど、絵の具っていう物質的な、3次元的要素を使って2次元のイメージを表出させているっていう実感があります。」
「これは表現活動全てに通じると思うんですけど、ある尺度で見た時に見え方が変わるってことが、自分が絵を面白いなって思った一つのきっかけだったんです。パラダイムシフトって言うか。自分にとっては絵とは人の見方が変わるスイッチみたいなものとして強烈に強かった。」
「絵画って3次元的要素を持ってるなって思ったきっかけは印刷工場の風景でした。テレビだったと思うんですけど、漫画の印刷工場で同じページが何枚も刷り上がっていって積み重ね上げててられる。その積み上がった側面に漫画の縁とかの帯の模様が出てきていて。同じページが例えば500枚積み重なると模様になっちゃう。
でそこで、『あ、これもこれも漫画だな!』って思って。自分がそう思ってるからそう見えてるっていう一つのいい例だなと思う。」
「絵画も薄いコンマ何ミリの絵の具を重ねていくことで、イメージが表出してくるという点では近いものがあるなと思うんで。その尺度で見た時に絵って、ちょっと見え方変わるんじゃないかなって思ったのが、今の作品のきっかけです。」
無数のラフスケッチ
抽出されたプロセスがイメージとなって、
キャンバスに描かれる
「実際に自分が制作していて感じてたことなんですけど、絵画のイメージ完成に至るまで、僕たち鑑賞者は他の人の作品を見るとき完成のイメージしか見れないじゃないですか、でもその過程には絵の具で重ねてイメージを表出していくっていう途中段階がある。
それは、その絵が完成に至るまでの必要な時間。その過程では、作家の言葉では説明できない『こうじゃなきゃヤダ』みたいな感覚的なことも含めて、ああでもないこうでもないって絵の具を塗り重ねていく。
その途中経過があるっていうのも、絵の他のメディアとは違う面白さの一つかなと思っていて。上からの上書きされて絵の具で隠されてしまう下の層も、その絵が完成にするのに必要だった。時間が積み重なって、1個の絵が誕生するまで、イメージが誕生するまでのストーリーを画として提示できないかなと思っています。描いてる人にとってはこの瞬間もあったなとか、ここから舵を切ったなとかっていうのが面白くて不思議。それをいかに面白く見せられるかなっていうのを、現在も試行錯誤しています。」
「本番のイメージを描く前にこういうドローイングを無数にやっていて、これを見て自分がどういう順番で絵の具を塗り重ねたかなっていうのを元に、この第2段階のやつができるっていう感じで。」
「ただ、これが本番になった時にじゃあ絵の具の重なりが起こってないかっていうと起こってはいます。同じ色をパチっと出すためにとか、ムラを消すためにとか、最低2層3層と重ねることはある。色を調整したりとかするための塗り重ねがあったり。それはどの作品にも共通しています。」
スーラの点描の技法、見方を変え、表現に変える
『Overlap of paint(dot3)』
「<筆触分割>といって彩度を高め合うために、わざとキャンバス上で絵の具を混ぜないで彩度を保った状態で斑のように配置するという技法があります。
スーラはそれをさらに細かくして、それをたくさんやったらもっと絵って鮮やかになるんじゃないっていうことで<点描>をはじめた。
印象派の人たち全体がですが、絵の具をどう乗せたら色がよりきれいになるかとか明度が上がるかっていう研究をしていて、それで色の乗せ方の方に意識が向いていったっていう話が、すごく面白く感じまして。」
―<点描>はすごく小さな色の点の集合でそれを表現しますが、山口さんの絵はそれをぐっと拡大したイメージを描いている?
「そうです、絵の表面に潜っていくっていうか。実際、自分の絵を顕微鏡で見たことがあるのですが、当たり前ですけど、その色の凹凸しか見えない。重なり自体はやっぱり見えない。
でも、絵画も平面って言われる中で、本当は積層化されたイメージのその間に潜っていけるような見え方ができないかなと思ってやっています。」
「今、赤坂のインターコンチネンタルホテルで展示させてもらっているんですが、ドットで描いた大きな作品で。3階のフロアに飾ってあって、近くで見た時の印象と、離れて下の階からあおりで見たときに、結構イメージが変わって見えたりして、そういうのが<点描>自体が持っている面白さ。
どういう距離感で作品を鑑賞するか、鑑賞者と対象の距離で見え方が変わってくるから面白いですね。」
-フェイバリックへの作品提供のオファーを最初に聞いたときの印象は?
「素直にすごく嬉しかったです。自分は絵を描いてるんですけど、例えば服だったり何かこれが欲しいと思って買い物する中で、自分の描いている絵がそういう他のメディアに使われたら?ってことを考えたこともあったので。
実際にTシャツとかは作ってもらったことあったんですけど。全く違うイメージが変わるようなものに置き換わるとどうなるのかなって、すごく興味がありました。最初思っていた以上にたくさん色々なアイテムで作っていただいて、すごく新鮮でとても嬉しいです。」
作品名:Overlap of paint(dot3)
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作品名:Overlap of paint(Face)
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作品名:Overlap of paint(Mona Lisa)
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作品名:Overlap of paint(Untyu Fuji)
作品「Overlap of paint(Untyu Fuji)」のすべての商品はこちら