Artist x(アーティストバイ) Vol.1 宮嵜蘭

【自分が描くアートを、手の届くDaily Itemにするために】

今回は、Artist x(アーティストバイ)の記念すべきVol.1ということで、イラストレーターの宮嵜蘭さんに、移住と制作の変化、地元での仕事、アートを商品へと落とし込むプロセスやFAVORRICでの取り組みなどを伺っていきます。
※Product Designer、以下PD
【Artist x、記念すべき第一回目】
PD「実はこのArtist x、ずっと構想を練っていたんです。でも日々の業務に追われていて…。ようやくスタートすることができて、Vol.1宮嵜さんで嬉しいです。」
宮嵜「こちらこそよろしくお願いします!」
PD「今回のテーマは『自分が描くアートを、手の届くDaily Itemにするために』ということで、進めさせていただきますね。まずは自己紹介をお願いします。」
宮嵜「 はい、イラストレーターの宮嵜蘭です。香川県出身で京都精華大学を卒業後、東京でフリーランスのイラストレーターとして活動し、今年の春に群馬へ引っ越しました。」
PD「急な移住のイメージがあって、聞いた時はびっくりしました(笑)」
宮嵜「私、東京は好きなんですけど、ずっと住む未来はあまり想定してなかったところがあって。そんな中で、パートナーの仕事の都合で新しい場所にご縁が広がったので飛び込んでみることにしました。 住んでみると、前橋や高崎は想像以上に都会で、アートとも親和性が高く、香川に似た心地よさも感じています。最近は生活にも慣れてきました。」
PD「同じく地方出身者としてクリエイティブの拠点は東京でなくてもいい派なので、とても理解できます。宮嵜さんは地元の香川から京都の美大、そして東京でフリーランスと、人生の要所で決断力がすごい!というか男前だな、と(笑)」
宮嵜「もう、その頃はなんと言うか“勢い”みたいなところがあって(笑)なんとなく難しそうなフリーランスを選んだんですよね。今振り返ってみると就職を選んだ方が良かったのかな、と思う時ももちろんあります。東京は情報が多くて、自分で選ぶ力が必要だし、そんな理由と勢いで東京に出てきました。」
PD「すごい感覚似ています。私も地元から東京の美大に来て、その後ロンドン→帰国してまた東京、みたいな感じなので。東京の厳しさも難しさも全て受け入れた上で選んだところあります(笑)」
宮嵜「東京にはそうさせる力があると言うか、地方出身だからこそ余計に感じる部分はありますよね。余談ですが、香川にポケモンセンターができて今ちょっと盛り上がってるんですよね。ヤドンがメインキャラクター?なんですけど、たぶんうどんとヤドンがかかっているんだと思います(笑)」
PD「うわ、それいいですね、うどんとヤドン(笑) 地元に世界的キャラクターがやって来るとエラい湧きますよね。香川の盛り上がりもそうですが、宮嵜さんがいらっしゃる群馬って私は個人的に推してて。縁もゆかりも無い土地ですが、出張で行く機会が多かったので。例えば世界に三か所しかないハーゲンダッツの工場やガトーフェスタハラダ、あとこんにゃくパーク!アミューズメント多めなイメージです(笑)」
宮嵜「確かに!言われてみたらそうですね。私、工場見学とかも好きなので、関東近郊で行けそうなところ行ってみたいですね~。」
【最近のクライアントワーク、そして印象的な出来事。】
PD「宮嵜さん、最近かなり活動的に作品制作されていると思いますが、クライアントワークのような、ある程度の縛りがあるお仕事とかについてお聞きしたいと思います。特に今までに印象に残っている案件とかあれば教えてください。」
宮嵜「そうですね、いくつかありますね。一つ目はフリーランスになってすぐの頃、奈良にあるタピオカ屋さんの壁画を依頼されたことがあって。3m×4mの大きな壁に絵の具で描きましたね。普通と違う画材を使用したりで難しさもありましたが、かなり貴重な経験でした。」
PD「普段クレヨンベースで描かれてますもんね、確かにクレヨンだと壁画に使うのには耐久性や経年劣化の問題とかあるし、何より何本使うの?!って感じですもんね(笑)効率を考えたら絵の道具になりますね。」
宮嵜「二つ目はそれこそ、地元の話になるんですが、ここ何年か地元香川の商店街の丸亀町グリーンで定期的にイベントビジュアルを担当させていただいているんです。クリスマスなど季節イベントの横断幕なども担当したりして。お陰さまで地元の人にも少しずつ認知していただけるキッカケになりましたし、何より両親や友人の家族にも喜ばれていて嬉しい限りです!」

クリスマスの横断幕は大きくて人の目を引きます

オリジナルのIPAラベルもクリスマス仕様
PD「おお、それはステキですね!地元の若い世代が地域を盛り上げ、循環していく。デジタルやAIなどアート飽和時代、どうしても軽く消費されがちだからこそ “人の手によるクリエイティブ”が評価されていることが嬉しいですね。アートにはまだ人の手と余白が必要だなって感じてます。」
【クライアントワークでの工夫や制作プロセスは?】
PD「宮嵜さんの絵には、フルーツやお花がよく出てくるイメージですが、クライアントワークで、すごく難しいな~と思われるようなモチーフってありましたか?」
宮嵜「それについては、”人物”ですかね。普段人物をあまり描かないこともあるんですが、表情のある人物を依頼される時の難しさをめちゃくちゃ感じています。大学時代に人物も描いていたんですけど、どことなく自分が描くと怖い印象で、少し苦手意識が(笑) 依頼内容によっては意図を咀嚼するのに苦労することもあります。」
PD「なるほど。そう言う時ってどのような解決方法で進めていますか?」
宮嵜「そうですね、例えば人物が得意な他のイラストレーターさんの表現を研究したり、デフォルメをどこまでしても大丈夫か?など幅を学び、自分の作品に昇華させていけるように工夫をしています。あともう一つは、取り敢えず思った通りに描いてみて、家族にチェックしてもらうという方法です。私にとって彼らのフィードバックはとても参考になります。」
PD「心強い相手が近くにいていいですね~。どうしてもクライアントワークって自分の好みだけじゃなく、空間や生活、ユーザーを想定して制作する必要があるから、自分の判断以外の意見を取り入れることはとても大事だと思います。」
【FAVORRICに参加したいなと思ったキッカケ】
宮嵜「2023年頃かな。自分の絵を布製品やグッズにしたいなという思いが強くなってきたんですけど、自分だけではクオリティの担保や在庫管理の問題が難しいし…。物価の関係で単価も高くなってるし…。で、とてもじゃないけど現実的ではないなと悩んでいました。そのタイミングでFAVORRICの存在を知り、多くのアーティストと取り組まれていて魅力的に感じ、自分もここで一緒に企画させていただきたいなと思ったんです。」
PD「そうだったんですね!元々、Weiさん(Wei Hsuan)さんと同じ陶芸教室でお知り合いだったってことも伺っていたんすけど。」
宮嵜「はい!だからWeiさんにもFAVORRICの参加の流れなども相談して、お問い合わせに踏み切りました!」
【FAVORRICとの親和性と、ものづくりの姿勢】

スワッチやサンプルを見ながら打ち合わせ
PD「FAVORRICって、ブランドとしてはしっかりとペルソナを持っているんですが、現状、若い層から大人まで幅広いお客様に届くような工夫をしているのも事実なんです。例えば、高いデザイン性や日本製にこだわったクオリティなど。小規模なチームだからこそできる丁寧なものづくりを心がけると同時に、FAVORRICの理念や世界観に合うアーティストを慎重に選んで声を掛けさせていただいているんですよね。」
宮嵜「それはFAVORRICを見ていて気付いた部分でもあります。多分ものづくりを大切に思うがこそ、アーティスト一人一人と真剣に向き合っていらっしゃるな、と。あと商品を見た時にまず実感したのは質がすごく良いこと。自分の商品にもあるブランケットは、グラデーションの出し方などを何度も試行錯誤して調整してくださったり、糸色の選び方だったりを相談に乗ってもらえて。制作工程がとても楽しかったのを覚えています。」
【FAVORRICの制作スタイル】
PD「FAVORRICは、本当にアーティストと二人三脚のブランドだと思っているので、一番にアーティストの意見を尊重し、丁寧に反映しながら商品を仕上げる工程を踏んでいるんです。いわゆる、”途中経過も見せず完成品だけ渡す”ようなやり方は一切せず、サンプル確認、色調整など、逐一来社していただき共有しながら進めているんです。だからリリースするまでに時間が掛かるんですが、やっぱりアーティスト自身が買いたいと思えないとダメじゃないですか。」
宮嵜「FAVORRICで一緒にものづくりさせていただき一番肌で感じたのはその点でした。アーティストファーストで考えてくださっているのがひしひしと伝わります。一枚の絵としてのこだわりを細かく相談できたことも心強かったですし、色数の制限があるものに関しても専門的な知識で話し合いながら進められたことは安心でした。」
PD「どうしても色見本帳だけでは判断しきれず、工場でのシミュレーションや修正を重ねて初めて形になるんですよね。協力工場も職人気質の方が多いので、私たちはそちらに対してもアーティストだと思って接しています(笑)」
宮嵜「工場さんがアーティストなの、なんだか分かる気がします(笑)」
【FAVORRICを通じて生まれた変化、アーティストによる発信の重要性】
PD「私たちは、"持ち歩けるアート"や"生活に取り入れるアート"というような、第三のアートの形を広げていきたいと思っているんです。商品をキッカケにアーティストを知ってもらう。その後、個展に足を運んでいただき、オリジナル作品の購入というような動線が生まれることが理想で。」

宮嵜「確かに、絵を買うことはハードルが高いんですが、FAVORRICの商品として“身近に持てるアート”になることで、友人や若い層でも気軽に手に取ってもらえる機会が増えた気がします。 その反響がとても嬉しいです!」
PD「あとはアーティスト本人による発信の重要性ですね。これはかなり大事だと思っていて。FAVORRICは実店舗がないため、オフィシャルのSNSなどで発信していくことがMUST。ただオフィシャルのみでは力が足りない…。そこでアーティスト本人がいかに発信をしてくださるかが要になってくるんですよね。」
宮嵜「私も自分のアカウントから商品の良さを発信させていただいているんですが、ソーシャルの部分じゃなくリアルな現場での発信も大事だなと最近感じています。例えば個展に来てくださるお客さまに向けて直接発信することもそうですし。地元の丸亀町グリーンでは展示の際に、ブランケットを壁にディスプレイしてみたんです。見てくれる方たちに”飾るアート”として提案ができたのではないかなと思っています。」
PD「宮嵜さんは作品を描く際に、しっかりと”商品を持つ人”と“その空間”を想像しながら制作してくださっているので、私も背筋を伸ばして、同じベクトルでレイアウトやデザインができるように心掛けています。宮嵜さんの描き下ろし4作品については、全て違うテイストで仕上げていただき完成度も高かったです。特にすももと紫蘇は多くの商品に対して相性が良くて。」

すももと紫蘇
宮嵜「すももと紫蘇はこんなにもいろんな商品にしていただけるとは思いませんでしたし、どれもとてもかわいく仕上がっていて感動しました!」
【制作環境の変化、そして環境が創作にどう影響するか】
PD「冒頭でも移住についてお伺いしたんですが、宮嵜さんは群馬へ引っ越して住まいが広くなったことで、制作スタイル自体が変わったりはしましたか?」
宮嵜「そうですね、元々”リビングで作業する派”だったので大きく変わっていないですね。私の場合、あえてアトリエ用の部屋は作らず、生活空間の延長で制作してるので(笑) ただ、引っ越して広くなったことで、ダイニングテーブルと作業机は分けられるようになり、以前より作業効率は上がったかなって感じです。作品を広げたまま制作と生活を両立できるのが快適になりましたね!以前のように、ご飯の度に片付けなくてもいいので、ストレスはなくなりました(笑)」
PD「なるほど、それは面白い話ですね!絶対的な広さの確保って、ストレスを始め全ての面から平和的解決になりますよね。すごいよくわかります(笑)」
宮嵜「絵を描いているとカラフルなものを見続けている状態なので食事の気分になれないし、同じ机の上に制作途中のものがあると、汚れも気になって毎回完璧な掃除も必要になるので、そのままの流れで食事に真摯に向き合えないというか。机を棲み分けられているからこそ、ご飯の汚れもクレヨンの汚れも気にしなくて良いのがすごく快適です。」
PD「カラフルご飯、確かに食欲減退まではいかなくても、食事と色って昔からよく語られていますもんね(笑)」
宮嵜「あともう一つ、今は一軒家になったので光もよく入り、庭に猫が現れるようになったんです。その影響か、猫の絵を描く機会が増えて。元々犬派なんですけど、描くとなると猫の方が楽しいなって思ったり。身体の形や動きなど独特で研究しがいがあるんですよね。」

猫の絵も研究中
PD「猫はアーティストにとって永遠のパートナーというか、そもそも猫の絵を描くアーティストっていにしえからすごく多い気がします。」
宮嵜「庭に来る猫もそうですし特徴を捉えることに集中してみたり、あと猫カフェとかにも行ってみたいなって思うようになりました。人物とか人の手とかそうですけど、自分の中での永遠の課題で。とにかくたくさん描くことでだんだんと特徴を捉えて、最終的に自分のものにする描き方を見つけていければなって。」
【群馬での出会いと、新しく始まった動き】
宮嵜「そうそう、実は群馬でステキな出会いがありました。同世代の陶芸家さんとのご縁で、大きなシェアアトリエを使わせてもらえることになって。私的には自宅では絵を、アトリエでは陶芸をという感じで分けて制作できたらなって。」
PD「おお!やっぱり東京以外でも活躍されているアーティストは多いと思うので、こういった出会いから、また新しい手法や考え方が広がるのも新鮮でいいなって思います。」
宮嵜「東京にこだわらなくても作品制作ができることもわかりましたしね。中心となるのは生活なので、生活と制作のバランスを一番取りやすい場所は自分にとってどこなのか?を考えるにはいいタイミングでした。」
PD「宮嵜さんのように、地方ならではの広さや環境を活かし、新たな表現に挑戦する流れ。今のアーティストのトレンドの一つでもあるし、もっと周知されるといいなと思います。東京の狭い空間で鬱々としながら制作している人がいたら、思い切って環境を変えて、だだっ広い場所に移る。案外、荒療治に見えてシンプルに考え方が変わる気がしてます。」
宮嵜「そう、東京にいた時より断然、今の方がフットワークも軽くアクティブになった気がします(笑) 東京在住時は展示やイベントも『いつでも行ける』距離感で、結局タイミングを逃してしまうことも多かったけど、群馬に移住して『月1で東京へ来る』スタイルになったことで、行きたいところを全部回ろう!と以前では考えられない時間割りをするようになりました(笑)」
PD「東京って、住んでいると見えないけど、離れると良さが見えてくるのかもしれませんね(笑)」
【最近好きなことやハマっているものは?】
宮嵜「新しいダイニングテーブルになったことによる変化で、テーブルウェアにハマっていて。お皿や雑貨を選ぶ時間が楽しくって。ホームパーティーが好きなので友人を招く時にカトラリーどうしようかなとか~ワクワクしながら考えてます!」
PD「多分それ、宮嵜さんが前よりも食事の時間に集中できるようになって、美味しそうに見えるかな?とか、どうやって盛り付けようかな?とかもフックになってる気がします!」
宮嵜「はい、きっとそうです(笑) あ、もう一つハマっているものなんですが、最近アートブックを5冊ほど購入しました。台湾旅行で、絵本屋さんやカルチャーショップでステキな本に出会い、日本に帰ってきてからも同じアーティストさんのアートブックを追加で取り寄せました。特に飛行機の本とプードルと飼い主をテーマにした本がお気に入りで!」
PD「本は大事ですよね~。私も人生の節目節目に見えて存在があった気がします。昔、手放してしまった海外の本、もう買えなかった時、後悔しましたね…。いい本に出会ったみたいでなによりです。ここでもご紹介させていただきますね!」

飛行機の本

プードルの本

お気に入りの本たち
【アーティスト活動を通して伝えたいこと】
PD「最後に、宮㟢さんから皆さんに向けてメッセージをお願いします。」
宮嵜「私の作品は、日常にある身近なものを中心にしているため、何か大きなメッセージやステートメントがあるというより、『日々のお守りのように寄り添い、勇気や自信を与える存在』でありたいなと思っています。誰かの背中をポンっと押してあげるような。自分の絵やポストカードを見て、『今日も頑張ろう』みたいな気持ちになってもらえる作品をこれからも制作していきたいと思います!」
PD「宮嵜さんの作品には人の心を潤す力や、誰かの支えになる力があると思っています。これからもたくさんの経験を積まれ、またステキでラヴリーな作品を発表されることを楽しみにしています!」

宮嵜蘭(Ran MIYAZAKI)
東京在住、イラストレーター。京都精華大学グラフィックデザインコース卒業。クレヨンや色鉛筆などで制作。植物や物など、モチーフの背景や空気感を直感的にとらえた表現で、広告やパッケージなどを中心に活動。
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このコンテンツは、アーティストとFAVORRICのプロダクトデザイナーが一対一で向き合い、作品の背景にあるビジョンやカルチャー、そしてこれからのアートシーンの在り方までを深く掘り下げるジャーナルです。
アーティスト x(掛ける) FAVORRICの融合、それがArtist x(アーティストバイ)
【アートと暮らす。】というFAVORRICのコンセプトを通じ、さまざまなテーマからアートを紐解いていきます。






