Artist x(アーティストバイ) Vol.3 れのすか

【暮らしの中で生まれる作品、気がついたら好きなものに囲まれていた。】

今回のArtist x(アーティストバイ)は、水彩画を用いた愛らしい質感で、書籍の扉絵/挿し絵から文具のデザインまで手掛けるイラストレーターのれのすかさんです。
大学時代-会社員を経て、分岐点となった専門学校。そしてイラストレーターになるまでのお話を追って伺っていきます。
※Product Designer、以下PD

—生まれた土地、そして歩んできた道。
PD「いつ聞いても、れのすかさんの経歴って変化球がすごい思うんですが、私の中で"華麗なる転身!"というイメージなんですよね。」
れのすか「確かに…珍しくはあるかもしれませんね。群馬生まれでそのまま地元の大学に進学したので、大学生までずっと県内にいたんですけど、実は私がいた学科が、社会情報学部といって文系で。履修内容も幅広くて、人間行動学とか心理学、あと経営学みたいなことも勉強できたんです。そこでプログラミングもやるんですよ。」
PD「SEのご経歴があったので、てっきりプログラミング専門のがっつり理系かと思っていました。」
れのすか「その中でも民法を専攻していたんですが、学部の先生がSEだったこともあり、その道に進む人が多かったですね。私も例に倣ってその流れでSEに。」
PD「とは言え、その後SE職を辞め、専門学校に進学されるわけですが、イラストレーターになるまでの経緯としては少し遠回りしつつも、それでも方向転換したいなと思われたんですよね?」
れのすか「はい。学生時代にMacを使用したことが大きなきっかけではあったかなと思いますが、当時はイラストというよりはもう少しアドバタイズ的なグラフィックから入っていったので、Illustrator(Adobe)を使って作業することも多かったんですよね。元を辿れば小学生の時の夏休みの宿題とかで、絵を描くこととかすごい好きだったな、と。中学も美術クラブに入っていましたし、高校の芸術科目選択も美術でしたね。」
PD「やはり物心ついた頃には、何かしらのアートに寄り添い始めていたんですね~。なんだろ、今でも画材屋さんとかの棚に絵の具がドーンと美しく陳列されているのを見ると、テンション爆アゲになるんですよね(笑) この感覚って、すでにアートを意識する前からありませんでしたか?私たちって。」
れのすか「うわ、それすごくよくわかります。私はジョイフルホンダが好きなんですけど、あんな感じで品揃えが整っている物を見ても同じ感覚になります(笑)」
PD「同じくジョイフルホンダ大好き倶楽部です(笑) 敷地面積が広いホームセンターって、目的の商品がある場所の近くに駐車しないと辿り着けないっていう…。この難易度の高さがまたいいんですよね〜。」
れのすか「まさにそうです!欲しいものは確実に揃うんですが、こちらが歩み寄らないとなかなか見つからないという。」
PD「でも、絵だけではなくて日常に関する道具ってアート界隈の人は大好物ですよね。れのすかさんがいつも使われている画材は水彩絵の具で、しかも私たちが小学生の頃に使っていたような最小限のシンプルなもの。敢えてアクリルガッシュじゃないところもれのすかさんらしくてとても好きです。」
れのすか「質感としてはアクリルより扱いやすいこともあり私にはこの画材が合っているなと思っています。」
—制作場所や作業環境で、特に大切にしていること。
PD「れのすかさんは制作の際、環境づくりで特に大切にされていることはありますか?」
れのすか「アトリエ部屋のような特別な制作環境があることは憧れですが、今はリビングで食卓を片付けて制作していますね。子どもたちが学校に行っている時間帯と夜の時間帯とか。でも、基本は太陽の光が入る時間帯に描きたい派ですね。」
PD「それ、実は結構重要ですよね。制作する上で制作環境に入る陽の加減。日中の時間帯が一番色味が正しく見れますしね。いくら部屋の蛍光灯が点いてても夜の作業ってどこか最終判断に欠けるというか…。夜って一番自分を信じられなくないですか?あ、そんなことない?(笑)」
れのすか「めちゃくちゃその通りです(笑) 夜に考えるポエム的な?若干高揚している状態だと恥ずかしいこと書いたり。同じかどうかはわからないけど絵もそうで、夜に描いた色合いを冷静に昼間に確認すると???みたいなこともありますね。」
PD「夜の自分て基本的に危ういし、眠たいし、信用できないですからね。そうか、れのすかさんはリビングで広げて制作するタイプですか。」
れのすか「すごく集中したいなと思ったら、多分自分の部屋とかがいいと思うんですけどね。私は基本一人で描きたいからリビングを使う時も敢えて一人になれる時間に作業しますね。日中が気持ち的にも安定するから環境づくりとしてはそういう時間で整理した整え方をしていますね。」
—今の暮らしと作品の変化。
PD「専門学校で本格的にグラフィックやイラストを学ばれていた時と、今の家族がいる暮らしになってからだと描く対象物や作風が変わったりしましたか?」
れのすか「そうですね、今までの自分のアーカイブを整理してみると、専門時代はもう少しグラフィック寄りの描き方が好きでしたね。当時は日常にあるものとかあんまり見ていなかったと思います。でも子供が生まれてから、身動き取れる範囲が家庭の中に代わり、その頃から描く対象物が身の回りのものになってきましたね。」
身の回りから着想を得た作品たち
PD「れのすかさんの作品て、車とかキャンディーとか洗濯バスケットとか、お土産でもらうようなお菓子のパッケージやくまのハチミツ。私たちが日常的に目にするものにスポットを当てているから、なんの抵抗なくスッと没入できるというか。個人的にはFAVORRICに参加していただいた以降の作品しか私は知らないんですが、以前は人物とか描かれたりしたことありましたか?」
れのすか「はい。専門学校時代もデッサンで人物など描いていたんですけど、やっぱりどうも苦手で…。今でも顔とか描けないと思います(笑) 飛行機とか車とかバイクなら描けるんですけどね~どうしてだろ。」
PD「男の子の母!って感じがします。同じく私も学生時代人物デッサン、すごく苦手でした。人間て多層的な構造で複雑で、骨がどうなっているのか、どこから生えてどの基点で曲がるのか、体つきを捉えるのに骨まで感じなきゃならないのが本当に難しいですよね。漫画家さんとかすごいなっていつも感心しています。」
れのすか「人間も動物もそうなんですけど、私の場合はそれ自体の具象化というよりは、それを模したおもちゃや人形やぬいぐるみになっているものを描いてるって感じなんですよね。だから人間も人形にしたら描けるんじゃないかなと思います(笑)」
PD「生身の人間てなんだかんだで描くの難しいですからね。きっと環境が変わるにつれ自然とれのすかさんは描く対象物を選んできた。その結果、今のスタイルになったということですね。」
—意識して”変えない”芯の部分。
PD「例えば、専門学校で本格的に絵を描くようになってから、今の画風や質感に至るまでに何段階かのステップは踏んでいますか?」
れのすか「最初はIllustratorを使用してちょろっと描く感じで、デジタル上で全てが完結する制作が多かったですね。加工やエフェクトとかも使ってやってみたりしたんですが、徐々にパソコンで描くより頭や身体を使ってアナログに進めていく方が好きなことに気付いて。表現を解放できる感じ?この先もずっとこのスタイルで描いていきたいなと思ったんですよね。」
PD「自分の中に一本曲げられないアチチュードやテーマみたいなものを持って制作されている人を見ると、画風や質感が変わってもその人の表現の仕方が増えたんだろうなと感じるようになりました。作家さんにもよるんですけど、その都度色んな描き方を模索したり、平面でも画材に捉われず水彩、アクリル、油など挑戦されるケースも見てきました。れのすかさんの中で意識的に変えない部分ていうのは頭や身体を使って"フィジカルに何かをする"ってことなんだろうなと聞いてて感じました。スタイルというか本質的な部分でとてもいいなと。」
—気分が定まらない時こその、制作と向き合い方。
PD「私よく、”制作=その時の症状が出る"って言ってるんですけど、本当に体現する形で自分の調子が悪い時は、制作物に出るんですよね、邪が。苦手な食べ物を頑張って食べる時、表情に出てしまうような感じで。」
れのすか「体調や気分が整っていないと思い通りに描けない時はありますね。」
PD「自分の個展だったらハンドリングが効くけれど、それ以外でがっつり納期があって、どうにかして気持ちアゲなければならない時、立て直しの工夫や意識変換とかどのようにしていらっしゃいますか?」
ラフアイディアノート
れのすか「もちろん自分の情緒や気分の問題でスムーズに手が動かないなんてこともあるので、思いついた時にすぐにラフを描けるように、このノートを持ち歩いているんです。ここにいろんなラフを描きためてストックして、それでも上手くいかなかったら一回やめてみて。短い時間内で可能な限り一回寝かせて、もう一回スッキリした頭で改めて見る、みたいな流れが自分の立て直し方法かなと思います。」
PD「ラフが8割みたいなところありますもんね。ラフや構図ができていれば大体見通しが立つ。そのあとはもう…得意分野じゃないですか?そこさえ決まればね、あとは割と手を動かすだけだから。それこそ、書籍の一部に挿し絵みたいなものと、丸々一画面のグラフィックとは全然構造が違いますもんね。」
れのすか「結局、時間がない時ほど無理やり進めると、どうしても腑に落ちなくて気持ち悪いなという感じで、根本的にダメだなと思って。これ以上同じものを突き詰めるより、1回リセットすることは急がば回れで効率はいいですね。」
PD「うんうん。あと気持ちの部分のリフレッシュはいかがですか?買い物とか、家の周りを散歩してみるとか?」
れのすか「日々のルーティンにはなりますが、一番リフレッシュできるのは車の運転ですね。誰かを乗せるわけではなく、絶対1人で。ここがポイントです(笑)」
PD「わかります(笑) 自家用車あったら、何にも考えず、行き先も行き当たりばったりとかででいい。」
れのすか「はい。スーパーに行くにしても、いつも行かないような?少し家から遠いスーパーに行ったりしています。地元が車社会だったからってのもあり、車は瞬時に遠くに行けるベストな移動手段ですね。」
PD「あぁ、うちの田舎もそうでした。18歳過ぎたら、まず免許を取るのが必須項目ってところ、ありますよね〜。」
—ひらめき、インスピレーションはどこから?
れのすか「アイディアの多くは日常的に視界に入ってくるものなんですが、思いついたらメモ的にラフを描くことでストックを増やしています。私の場合、インスピレーションを受けるのは服が多いですね。服の色。」
PD「雑誌を見たりとか街で見かける人の洋服を見たりとかそういう感じですかね?」
れのすか「はい。例えば、その日に会った人のこの服の配色いいな〜、とか覚えておいたり。」
PD「いいですね。今度描きたいな~と思ったものに当てこむ色のアイディアとかね。ストックしておくとすぐ引き出せるし。色って大事ですよね。」
れのすか「自分ではちょっと思い付かないような色の組み合わせは、街中で見かける誰かのお洋服のコーデとかが一番参考になりますね。」
—生活と制作のバランスの取り方。
PD「お子さんも兄弟がいたりすると、どちらかが入学式で、参観日で、運動会で、卒業式で、とか。この手のイベントって往々にしてあるじゃないですか?お仕事の納期が重なった時など、どのようにコントロールしていますか?」
れのすか「基本的には、何かが起こっても間に合うように長めで制作できる納期のものを請けるようにしているんですが、最後はどうしても力技になっちゃいます(笑)」
PD「赤ちゃん時代なんて少しでも目を離した隙に…みたいなことも起こるし。いわゆるフリーランスで制作活動しているお母さんアーティストたちはどうやって集中をするのか気になっていました。」
れのすか「逆に生活という時間が大半を占めているからこそ、切り替えて”今は、自分の時間!” みたいに集中できるかもしれないですね。」
—クライアントワークにおける、自分の作品の見え方、そして折り合い。

PD「滅多にないかもしれないですが、無茶振り依頼みたいなことってありますか?今まで請けた中で、思いもよらない内容だったり、えらくカロリーが高かったなっていう案件など。」
れのすか「一番困ったのは、納期が短く、この仕事で何を表現したくて、何を描いて欲しくて、何を期待されているのか?が曖昧な時ですね。とにかく時間もないしアイディアをまとめるのがキツい。形が決まると早いんですけどね。」
PD「頭出しざっくりスタートのパターンですね。」
れのすか「着地として何を目指しているのか?汲み取れない状態のままの案件があると、進め方としても結構な枚数ラフを出さなきゃならない。そうするとかなり大変で。もはや何も閃かないしインプットも限界!ってなったら、冷静に絵も含めて分析してみたり。今、何で自分はできないのかなとか考えてますね。」
PD「でも、クライアントが情報を十分に与えてくれない状況がそもそも良くはないんですが、それに対してれのすかさん自身、”私が閃かないのがダメだ!” っていう自責的な考え方になるのが、とてもれのすかさんらしいと言うか、優しいお人柄が出ているなと思いました。私なら前のめり気味に相手に聞いちゃいますもん(笑)」
れのすか「いやいや、全然そんなことないです(笑) 他の方に依頼したらもっとスムーズに進んだんじゃないかなって考えることはあります。」
PD「よくあるじゃないですか”いい感じに仕上げてください!” みたいなフワッとしたヤツ。ある程度、出来上がりの構想がお互いの中にないと、どんどん離れて行っちゃって戻せないところまで行くんですよね。たくさんのラフ案の中から選びたいって言う気持ちもわからなくないですけど、それだってアーティストにとっては労力ですしね。有限の中で無駄な動きが多くなっちゃう。過去のアーカイブとかインスタのこの感じで描いてくださいとか参照してもらえるのが一番いいんですけどね。」
れのすか「そんなケースのクライアントワークもたまにあるので、最近では深く迷いすぎず、じゃあいつも通り描けばいいか!って思うようにしています。ありがたいことに、どんでん返しみたいなのはあんまりないので、なんとか助かっています(笑)」
PD「それはクライアントがなんだかんだれのすかさんを理解して、期待して、お任せにしたくて頼んでくれてるんだろうなって思います。」
れのすか「そう言えば、変わった案件もありました!プロレスのイラストを描いて欲しいというものだったんですが、”え?なんで私に?”って感じの依頼でした。」
PD「え?れのすかさんにプロレスのイラストですか?!」
れのすか「はい、あとは変わったのだと男性用風俗店のウェブサイトとか。」
PD「え??更に謎!そんなにかわいい絵柄の方向性でいいの?っていう(笑)」
れのすか「でも相手もまあ業界が業界なので、いろいろと気を遣ってくださったんですけど、改めて伺ってみると、ちゃんと私の作風っていうのを承知の上ででした。それが不思議で(笑)」
PD「近年稀に見るミスマッチのようでいて、なんらかのシンパシーがあったんですね(笑) FAVORRICのアーティストでもプロレスのイラスト依頼を請けている方はいましたね~。普通のレスラータイプではなく、マスクレスラータイプのようにキャラ化できるもの。あとは芸人さんのポスターとかは結構いるかも。最近芸人さんたちもデザインやアートの感度が高い方たちが増えてきましたしね。ミュージシャンのCDジャケット的なのもありますね。今でこそサブスク時代だから少なくはなったものの、LPとか出す方たちのためにイラスト描いているアーティストも多いですからね。そのままツアーグッズに流用したり。」
れのすか「それはちょっといいですね~。音楽のイラストはやってみたいです!自分の好きなミュージシャンとかだったら俄然パワー出ますよね。」
PD「あと制作過程において、自分でいくつか判断に迷う時ってどうしていますか?」
れのすか「そうですね、そんな時は家族に協力してもらっていますね。特に子どもたち。一番よく私の作品見ているし、意外と辛口だったりするので。しかもどっちがいいかな?と聞いた上でその理由までもちゃんと吸い上げます(笑)」
PD「クリティカルなことも含めちゃんとジャッジしてくれるとは!お母さんの仕事を間近で見ているのって子どもたちだし、最高な評価者かもしれませんね。」
—ターニングポイントになった仕事は?
れのすか「”こんなことがやりたくてれのすかさんにお願いしました。” や、”こういうことやりたいんです。“ という丁寧なやり取りをしてくださる仕事はものすごく印象に残っていますね。お互いに理想の仕上がりで理想のものができたっていうのが目に見えて分かるので。」
PD「自分で好き勝手自由に描けることと違って、何かしら課題があるからそれに則って進める。でも自分のアーティストとしての質感は出す。相手の意向にも寄せていきながら譲れないところは押さえるということですよね。」
れのすか「そうなんですよ、期待に応えつつ自分の個性やテイストを出すと言う。これって簡単なようで意外と難しいことだなって考えいてます。」
—作品を“商品”にするという選択。出来上がった商品を初めて手にした時。

PD「我々との出会いって2022年だったと思うんですが。もう4年前か…早いですね〜。私がれのすかさんにお声がけしたことがきっかけだったんですが、当時まだ駆け出しのプラットフォームに対して懐疑的にならずによく参加してくれたなって感じで(笑) 参加するにあたって、ためらいとかなかったですか?」
れのすか「いえ、全く!私も活動を本格的に始めた頃だったので、逆に”え?私でいいの?” という気持ちでした。」
PD「本当に参加してくださっているアーティストのみなさん奇特な方たちばかりで。特に最初の頃の参加者は、フロントランナー不在の中のスタートで不安だったのではないかなと思っていました。」
れのすか「十分な打ち合わせもあったし、何より進め方が丁寧で。アーティストのことも作品のことも大切に扱ってくださった印象でした。知らない間に進行が決まってしまうとかではなく、アプルーバルを取り確認して進んでいくので安心そのものでした。」
PD「大なり小なり商品企画はご経験があるか思うんですけど、FAVORRICの進め方って途中で一回マス見本(プリント見本)を取ったりして、少し特殊じゃないですか?」
れのすか「今までは商品を作る上でこのような工程はなかったですね。途中段階〜FIX、そして生産進行まで商品ごとに色ブレなどがないのはこの進め方のお陰ですね。」
PD「流行病の事情で厳しい時期もありましたが、私たちは物理的に遠い場合でも、どこかのタイミングで必ずオンライン含めて対面するようにしています。特に工場さんにはこちらからお願いしているので、誰かしらチームメンバーが会いに行って打ち合わせするようにはしています。」
れのすか「何度か足を運ぶことで自分自身もこの商品企画に参加しているんだって言う実感も湧きました。顔の見えるものづくりは信頼が置けるな、と。」
PD「単発な仕事ならともかく、長らくお世話になる場合。やっぱり、作り手も依頼者もお互いがどんな人か、どんなが企業かがわからないと気持ちよく企画ができないですからね。アーティストも同じです。やっぱりお会いしてちゃんとお話ししてお互いの認識合わせをして。これがものづくりの基本であり、背景のストーリー含め"企画" だと考えています。」
れのすか「こんな時代だから誰とでも対面せずに簡易的にコラボレーションができたり、展示だって作品を送るだけで、アーティスト本人が立ち会わなくても設営されて開催されるみたいなことができるようになったじゃないですか。便利ではあるけどどこか寂しい、みたいな。」
PD「せっかく作るんだったら、全員納得して進めたいっていう。Item Proposal(商品提案書)を共有する時も、アーティストが想定しないレイアウトやデザインで一旦ぶつけてみて、そこからベストな状態を探っていくんですよね、結構荒技、力技なんですが(笑)」

ルームサンダル
れのすか「逆にそれが新しい発見で嬉しかったです。自分だったら絶対このレイアウトにはしないだろうなっていう。例えばルームサンダル?右左の足のデザインが違うのはとても新鮮でした。あと、わたしはクッションとかに使われているファスナーが繊細で生地馴染みが良くて、とても気に入っています!」

YKKのコンシールファスナーを採用
PD「コンシールファスナーですね。FAVORRICはクッションに採用しています。いいですよね~、テープやムシ部分が見えなくてスライダーだけ見えているっていう。アパレル副資材では縫い目など繋ぎの見え方を損ねないようにワンピースなど高い商材に使われていますね。」
れのすか「家の中にクッションいくつかあるんですけど、FAVORRICのクッション一個だけなんだかやたら高級感があるっていう(笑)」
PD「こういう細かい部分のこだわりって商品を作る上で大事で、何よりもアーティスト本人が欲しいって思えないと意味がないなって思っています。」
—商品化プロセス。一番こだわったポイント。
れのすか「商品自体の形が決まっているから、どうしても縦に長い作品とかは切れてしまうことがあり、それに関しては小さくしてでも全体感を入れられないかなって相談させていただきました。」

"これから"
PD「作品数を敢えて限って商品展開を多くするという特殊な作り方ですからね。作品によってはレイアウトに収まらなかったりもしましたよね。ニットバッグは ”これから”という私の好きな作品で作らせていただいたんですが、全景が入るように設計しました。」
れのすか「一つの作品が人の手によっていろんな形に変わること。普通に活動していたら出くわさない機会でしたので、作品を客観視することってこういうことか、といい勉強になしました。」
PD「例えば誰もが知っているミッキーマウス。こんな有名なアイコンがいろんなアーティストの手によって全然違う姿で表現されることとか最たるものですよね。私たちはオリジナルのミッキーマウスを知っているから、そのアイデンティティを理解し、フィルターを通して見る。だから”ミッキーマウスではあるけど、新しい解釈” って面白さに近い感覚かもしれないですね。」
—どんな人に手に取ってほしいですか?
れのすか「私を知ってくださっている方はもちろんですが、FAVORRICの商品きっかけで私や作品を知ってくださった方とかにも届いてほしいですね。買ってくださった方で、"この絵にはこんなメッセージがあったんですね!" ってお声がけいただいたりするとすごく嬉しくて。暮らしをもう少し楽しみたいという感覚で私の商品が目に留まったらいいなと思います。」
PD「FAVORRICではそういった偶然の出会いを期待してPOPUPとかに出展するんですが、れのすかさんが仰るように、お客さまは商品ベースで興味を持ってくださることが多いんです。その動線を大事にしたいので、アーティストと商品詳細のキャプションを設置して、そこから更にアーティストさんのことを調べてくれたり深く入り込んでもらうのは面白いですよね。」
—最近気になるもの、好きなもの、ハマっているもの。
れのすか「ここ数年、哲学に関する本が好きですね。例えば、"この迷いかは何から来るものだろう?" とか、今の自分の状態を知りたくて。そういう時、心理学や哲学の本を読んだりしています。」
PD「決まった作家さんとかとかいらっしゃいますか?」
れのすか「私は実直に整理と解釈している人が好きな傾向があります。最近は” 嫌われる勇気”とか書いていらっしゃる岸見一郎さんとか。アドラー心理学の人で、この人の”自省のすすめ”を読んでます。」
PD「”嫌われる勇気” は代表作ですね~。本屋さんとかでも取り上げられていること多い気がします。」
れのすか「こういう本を読んで今の自分の状態を整えたり立て直しているところはあります。本の中に出てくるフレーズって著者本位の見解とは言え、自分にも起こり得る一般的な考え方でもあるなって。」
PD「恥ずかしながら、私は本を全く読まないのですごく人生損してるなってたまに思います。時間を取って集中して読もうと買ってはいるものの…。」
れのすか「でも分かる気がします。本を読むことってある種の集中行為ですもんね。あと、海外のイラストレーターさんの本を見るのも好きで。色やモチーフとかその国らしさが出ていて。旅の本とかも好きです。」
PD「いいですよね!旅系で言うと、搭乗した時に背もたれに置いてある機内誌?あれに旅コラムを書いている人がいて。特定の誰って言うのはないんですけど、飛行機乗る機会があると必ず読んじゃうんですよね~。観光地ではないコアな場所の紹介とか。」
れのすか「そういう旅慣れた人がする旅行とか憧れますよね~。いつか旅しながら絵を描いてみたいです。」
—今後の挑戦と展望。
PD「これからの制作について伺いたいんですが、今れのすかさんが個人的に気になっている表現やスタイル、素材などはありますか?」
れのすか「私はもう少し平面を詰めていきたい感じではありますね。紙以外の版画とか立体とかも興味はあるんですけど、今はどちらかと言うと平面かな?特にシルクスクリーンはすごく好きなので、版を作って何かをするっていうことは挑戦したいなと思っています。」
PD「れのすかさんの新作でバスタオルがリリースされるんですけど、2色展開の作品とかはアリですよね。デジタル捺染プリントは水彩のムラ感をリアルに表現できるのでもちろんステキなんですけど、シルクスクリーンでパキっと表現するアプローチも新しい形だと思います。」
れのすか「その辺、突き詰めていきたいですね。もっと詳しくなって応用できるようになりたいですし、新しい方法を模索することも今後はやっていきたい気持ちでいます。」
—イラストレーターとして、大切にしていきたいもの。
れのすか「そうですね、常にその時の感情や状態、気持ちを正直に表現していきたいです。だけど決して押し付けにならない作品したい。作品を手にしてもらった人には自由に解釈してもらいたい。私はこう描いたけども、その先はみんな自由に考えてくれていいんだよ?っていう感じでしょうか(笑)」
PD「確かに。例えばテーブルにコーヒーとキャンディーが置いてあります。それを楽しいってとるか、寂しいってとるか、空虚ってとるかは見る人によって全然違うし。それも各々の解釈ですもんね。」
れのすか「はい。その余白を潰さないように、でも自分の気持ちもちゃんと表現すると言う。」
PD「なかなか難しいけど、汲み取った要素を自分のものにして、尚且つ咀嚼して昇華させる。これが作品を通してできるとステキなことですよね。」
れのすか「私は日常の鮮やかな一瞬を描いているんですけど、似たような気持ちを少しでも感じてもらえたらなと思っています!」
PD「ありがとうございます。すごく特別なことを感じて欲しいと言うよりは、日常の中にある些細な瞬間だったり、れのすかさんの思いを感じ取ってもらうこと。誰かの人生の中に少しでもその存在があることって嬉しいですもんね。それをれのすかさんはイラストという媒体を通して伝えていると思います。日毎増えていく作品をこれからも楽しみにしています!」

れのすか
群馬県生まれ、東京都在住。
専門学校でグラフィックデザインを学んだ後、2019年よりイラストレーターとして活動中。
水彩絵の具で、モノ・文字・動物などをモチーフに、書籍や雑誌のイラストレーションを制作。
シンプルな線とゆるい塗りが特徴。
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Artist x(アーティストバイ)について
このコンテンツは、アーティストとFAVORRICのプロダクトデザイナーが一対一で向き合い、作品の背景にあるビジョンやカルチャー、そしてこれからのアートシーンの在り方までを深く掘り下げるジャーナルです。
アーティスト x(掛ける) FAVORRICの融合、それがArtist x(アーティストバイ)
【アートと暮らす。】というFAVORRICのコンセプトを通じ、さまざまなテーマからアートを紐解いていきます。







