アーティストインタビュー vol.09 生地史子

2022/5/20

フェイバリック参加アーティストVol.09

木そのものの味わいを引き出すこと大切に、木目と素材のぬくもりを感じられる作品が特徴的な挽物木地師・木工作家、生地史子。

 

 

生地史子プロフィール

 

石川県小松市生まれ。

大学時代に博物館マネージメントを学び、歴史あるものの保存、伝えることのほか、現在のものづくりの現場、新しい流れ、日本ならではの技術の継承やこれからのものづくりについて興味をもつ。

まずは自らも何か伝統的な技術を身に付けたいと思い、地元である石川県に戻り、加賀市山中温泉の挽物轆轤(ひきものろくろ)技術研修所で木工技術の一つである挽物木地(ひきものきじ)の技術を学ぶ。卒業後は、伝統工芸士である佐竹一夫氏に師事。

現在は小松市にて漆(うるし)作家などの挽物木地の請け負いや自身のプロダクトを製作、展示会などにも参加。また、木工以外のジャンルとの共同製作も行う。

自然素材を相手にものづくりをするなかで、仕事面だけでなく日常も自然のなかに身を置くことが多くなっている。山に入って季節の花や野草をつんだり、メディカルハーブについて学ぶなど、木材に限らず植物の持つ力を暮らしの中に取り入れる方法を日々模索し、実践している。

 

 

<提供作品>

花皿(豆皿、小皿)             

塗分椀

生地史子さんのアーティストページはこちら 

 

目指すのは、日常に馴染む器づくり

主に器(うつわ)をつくっているのですが、使いやすさというのを第一に考えています。

あとは色使いもあまり派手なものはつくらないのですが、テーブルに馴染みやすいとか空間に馴染みやすいとか、そういった馴染みやすさを意識してのことです。できれば日常に溶け込んで、日常で使っていただきたいので。

 

そこまで派手ではない、少しポップな印象の塗分椀

やはり馴染むことを考えますので、そこまで派手ではないのですが、少しポップな印象の、自分の発想だけではきっとこういう色にはならなかっただろうと思える色味に挑戦できたので、新鮮で楽しかったです。

水色は普段もときどき使います。特に白と水色の組み合わせが気に入っていてそれを使っているのですが、黄色と茶色の方のアイディアはFAVORRICさんの方からいただいて。

きっと自分だけでは選ばない色だったの新鮮でした。

 

漆って乾いてすぐの色、乾いてしばらくたってからの色が変わってくるんです。乾いた時はどれもグレーがかったちょっと暗めの色になるのですが、それから1週間くらい経つと色が鮮やかになってきます。なので微妙にどれも違った色味になります。それが漆の楽しみでもあります。

 

 

作品と実用の“間”を目指す


普段はろくろをつかって制作することが多いのですが、最近は彫刻刀やノミをつかってカトラリーをつくっていまして、器にもやってみたいなとは前々から考えていました。

今回の花皿は、最初ろくろでお皿を挽いてからあの形に削ってゆきます。今までつかっていたろくろも使いつつ、新しい道具も使うことができて自分にとっても新しい挑戦となりました。手彫りですのでひとつひとつよく見ると表情が違うと思います。

 

−花びらのデザインはどのようにしてできたのでしょう?

 

生地さん

花びらのデザインはいろいろ試行錯誤して、結局落ち着いたのは四葉のクローバーなんです。

四葉のクローバーってやっぱり縁起がよいですし。(笑)しあわせになれそうなモチーフだなと思いまして。他にももう少し細かい花びらだったり候補はあったんですが、複雑になればなるほど手間もかかりますし、かかった分“作品っぽく”なってしまう。

器としての機能する時に複雑すぎるとちょっと使いにくい。四葉のクローバーはその点で「ちょうどいいな」と感じました。そういう作品っぽくなって欲しくないところと、なって欲しいところのちょうど“間”を狙いたいと思っています。

 

 

この土地で何百年もかけて培われてきたもの

それを、現代だから楽しめる“豊かさ”の形

―最初にFAVORRICから作品提供のオファーがあったときの印象は?

 

生地さん

楽しそうだなとは思いました。やはり自分の発想を広げてくれそうだなと。色々なアーティストさんとコラボするというお話を聞きまして、アーティストさんは完全にご自身の表現として作品をつくっている。

私は食器なので実用的なものをいつも考えてつくっているのですが、作品をつくっている方とやりとりされているFAVORRICさんと、私もやりとりをすることで新しい発見がありそうだなと。アイデアも具体的に出してくれたりしたので、そういうところが面白そうだなと思いました。

 

今、大量生産の工業品とか含めるとたくさんの選択肢があると思うんですね。そういうものと丁寧に作れられたものの組み合わせというものも、全くありだと思いますし。

自分もそうやって楽しんでいますが、現代だからこそ両方を楽しめる。でもその中でも何百年もかけて伝わってきた技術というのを、さりげなく使えているのってすごく“豊か”だなと思っています。

今は今でよいものもたくさんあって、でもその中にこの日本という土地で伝わってきた技術も日常にあって、という“豊かさ”。そういう意味でも、使い方は自由だと思うので、買っていただいた方の食卓や生活空間に馴染んでいただけたらと思います。普段使いで使ってくれたらうれしいです。

 

 

 

 

作品名:『花皿』

ろくろで木を挽き、皿に整形したのち、

四葉のクローバーモチーフを

一点一点手彫りで仕上げました。

小さくかわいらしい豆皿と小皿のシリーズです。

 ※花皿の作品ページはこちら

作品名:『塗分椀』

ツートーンに塗り分けられた漆の椀。

派手すぎずちょっとポップな色合いが

日常に馴染みながら食卓を明るく彩ります。

塗分椀の作品ページはこちら

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