ものづくりコラム-伝統と水が織りなす上質な生地
2021/11/30
近江、湖東地域。
伝統と清冽な水が織りなす上質な麻と綿。
滋賀県湖東地域。
古くから麻織物の産地として栄え、現在も日本有数の織物の町であるこの地には、今も「近江上布」と呼ばれる伝統工芸が綿々と受け継がれています。
その繊維産業を支えているのは、この地の風土。鈴鹿山脈を源流に琵琶湖に注ぐ愛知川(えちがわ)周辺には広大な扇状地が広がり、豊富な清流が伏流水となって地下を流れています。
清冽で豊富な水に支えられ千年以上も繊維産業を育んできたこの地で、FAVORRICで使用している麻(リネン)と綿(サテン、オックス)がつくられています。
「この地域は大きな扇状地になっていて、地下に大量の伏流水が流れているので、一年中を通じて比較的湿度が高いのです。麻の糸はとても切れやすく扱いが難しいのですが、特に乾燥すると切れやすくなります。一定して湿度があるおかげで織りやすい。そんなこともこの地で上質な麻がつくられてきた理由です。」
「近江上布」で知られる麻の名産地。水が豊富なことに加え、気候にも理由があると麻生地の生産者は語ります。
美しさ、手触り、耐久性。
熟練の職人の手がゆっくりと織り上げるリネン。
「とにかく麻の糸は切れやすいので、高速の機械でスピーディに織るには限度があります。織っている途中でも頻繁に糸が切れますので、切れたら止めて結んでという作業を繰り返す。手間はかかりますが、その繰り返しがリネン特有のムラ感にもつながります。」
大量に生産される生地とは違い、ゆっくりと丁寧に織り上げられてゆくFAVORRICのリネン。アーティストが生み出した写真や絵画をプリントする上で、生地にも独自の工夫がなされていました。
「リネンは透け感が特徴の生地です。プリントは、生地の密度感が高い方が再現性は高いと思いますがそれではリネンの風合いが損なわれてしまう。そこで、リネンではあまり行われないシルケット加工という工程を加えています。繊維と繊維がぴっちりと並ぶことで、発色がよく上品なテリ感も出てきます。」
アーティストの作品を生活の道具に。そこにも品質の差がありました。
「今回のリネンは、織り上がりの幅から仕上がりに向けてかなり縮小率が大きいリネンになっています。縮小するということは、経糸に織られ込んだ緯糸が比較的密度高く凹凸をつくるということ。それによって、表面に独特の陰影が生まれるのと、形も崩れにくくなる。洗濯しても耐久性が高いということになります。」
アンティークのタイプライターを思わせる、織りのマスターパターンをプログラムする装置。今も、現役。メーカーとしての歴史を物語ります。
この「晒(さらし)」でなくては、
ここまでの高精細のプリントは実現できなかった。
150年の歴史を誇る最高級の「晒」。
猪子山から琵琶湖を望む。豊富な水を湛える琵琶湖湖東地域。
アート作品を生活の道具として楽しむ。
そう考えるFAVORRICにとって、鮮やかで精細なプリントの実現はもっとも重要なテーマでした。そのとき、特に重要になるのが生地を織りあげた後の「晒(さらし)」と呼ばれる工程です。
洗い、不純物を取り除き、漂白し白くする。その工程を繰り返すことでプリントに最適な白さが生まれます。FAVORRICで使用しているサテン、オックスは業界でも最高級の定評を得る「晒」が施されています。
「私どもの会社の創業は江戸時代の安政年間、約150年もの歴史があります。当初は『近江上布』で知られるように麻を中心に扱っていましたが、今は綿や合繊など幅広く扱っています。『晒』はさまざまな配合の薬剤で漂白し、洗いを繰り返して不純物を取り除いてゆきます。単純に白くするだけなら強い漂白剤を使えば白くはなるのですが、繊維を傷つけてしまいせっかくの風合いを損ねることになります。この生地、この密度感、この仕上がりイメージであればこの薬剤、この濃度、この工程をこの回数繰り返すといった経験が品質を左右します。その点、うちは150年分の経験が蓄積されていますので、皆様から高い評価をいただいているのだと思います。」
そして「晒」でも愛知川流域扇状地の豊富な伏流水が、その品質を担っていました。
近江上布の里から生まれた高品質のリネン、サテン、オックスをあなたの暮らしの中に。アートとともに。
リネン独特の風合いを残しながら、アーティストの作品をできるだけ精緻に再現するように。透明感と濃淡が作品に新しい楽しみをもたらすリネン生地。永く生活の道具としてつかっていただけるように耐久性にもこだわりました。
最高の水と歴史が育んだ最高級の「晒」で、高精細なプリントに対応できるサテンとオックス。透明感のあるリネン比べ、インクの乗りもよく、アート作品の鮮やかさ、精細さを余すことなく再現します。FAVORRICの高品質の生地をぜひ一度、お確かめください。