ものづくりコラム-技術と歴史が込められた日傘

2022/07/14

工程のほとんどが手づくり
多くの職人の手を経て、技術と歴史が込められた
日傘

他にないデザインでフェイバリックの中でも人気アイテムとなっている「日傘(晴雨兼用傘)」。

品質的にも非常にこだわったものになっています。

その制作工程は、ほとんどが職人よる手しごとです。ほぼ100%職人による手しごとの結晶ともいうべき「傘」。

その品質について、アンブレラマスターでもある新田商店の新田さんにお話を伺いました。

 

新田さん

「傘というのは骨組み以外はほとんど手づくり、手縫いででき上がっています。

骨組みだけは海外への外注になっていますが、それについてもJUPA(日本洋傘振興協議会)が定めるJUPA基準に基づいて厳密にクオリティが管理されています。

作業としては、まず生地の裁断からはじまります。『小間』と呼ばれる三角形に、型を合わせて生地を断ち落としてゆく。次はそれを縫い合わせます。

実はこの工程だけは専用のミシンをつかって『環縫い』という縫い方で合わせてゆきます。傘というのは開けたり閉めたりしますから、ある程度生地に弾力があってゆとりないと破れやすくなってしまう。『環縫い』ですと輪っかを作りながら縫っていきますので、生地に柔軟性がでて丈夫な傘に仕上がります。

なので、ここだけはミシン、機械に頼るのですがその他は完全に手作業です。」

「次に、頭頂部を縫い合わせます。『穴かがり』という縫い方で真ん中に穴を開けて縫い合わせ、最終的にここに『石突き(傘の先端部)』を通します。

次いで、骨の先端部に当たるところに『つゆ先』という部品をひとつひとつ縫い合わせてゆく。それが終わったら、今度は骨の方に『ダボ』と呼ばれる生地を縫い付けます。

傘を開くと骨を支えている『受け骨』という小さな骨があると思うのですが、親骨と受け骨を繋いでいる接続部に『ダボ』とよばれる布を覆うように縫い付けます。さらに骨の頭頂部付近に『天紙』という部品をつけたら、傘に沿って生地を張ってゆく。『つゆ先』はキャップ状になっていますので、それを骨の先端に被せるようにして取り付けてゆきます。」

 

「その後は『中綴じ』と言って生地と骨を縫い付ける工程になります。骨によって縫い合わせる箇所が違ってきますが、一般に骨の構造が複雑な折りたたみ傘の方がたくさん縫い合わせる箇所があります。」

 「ちなみにですが、東京と大阪の傘づくりの唯一とも言える違いがこの『中綴じ』に現れます。

東京の方は『小間』を縫い合わせるとき、上の方から縫ってゆく。

大阪は下の方から縫っていきます。

下から縫うと切り口が骨に対して右側に来ますので、『中綴じ』する際に縫い目がコブの下に入って隠れて目立ちにくくなります。

逆に左側にあると縫い目が目立ちますね。ほんのちょっとの違いですし、いろいろお互いに言い分はあるんですが(笑)。そういった違いもあるということですね。」

 「あとは『陣下』という頂点につける『陣笠』を受ける部品ですね、これをとりつけて、『陣笠』をつける。で、ネーム(傘をまとめるバンド)を縫い付けたりして仕上げになります。

FAVORRICさんの傘はネームや、ダボ、天紙といった裏側部分の生地もすべて同じ生地から断ち落として使っていますので全体的に一体感がありますね。」

 

手づくりだからこそ、ほとんど修理するができる

数十年でもつかってもらえる「品質」

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「ほとんどの工程が手しごとなので、逆に言えばほとんどの故障やほつれを直すことができます。傘というのは何と言っても扱いですから、扱いによって長持ちしたり壊れてしまったりする。でもちゃんとしたものであれば、ずっと使えますし、あるところが壊れても修理できるんです。

もう長いことつくっている傘で、発売して10年以上たったくらいのところではじめて修理依頼が来た、なんてことも多々あります。愛着をもって、大事につかってもらえたんだなあとうれしくなりますね。」

 

裁断も、ひとつ、ひとつ、丁寧に

他のどこにもない、FAVORRICだけの傘づくり

 

FAVORRICの傘づくりにおいて、一番苦労した、あるいは気をつけた点はどこでしょうか?

新田さん

「ふつう、裁断は何枚か重ねて『小間』に落としてゆく(裁断していく)んです。その方が早いですし、無地やパターン柄であれば特に問題は起きませんからね。

でも、FAVORRICは、柄が特別じゃないですか。小間ごとに違いますから。

そうなるとひと小間、ひと小間慎重に断ち落としてゆくしかありません。

しかも、それだけじゃなくて、通常、裁断というのは生地の表面と裏面を背中合わせにして2枚一気に断ち落とすんです。

そうすると、そのまま合わせて縫えばいいですよね?4枚重ねて断ち落とすこともあります。するとね、傘というのは8枚の小間でできていますから、2回裁断すればひとつ分になるわけです。

FAVORRICさんの柄はそれができませんので。8回断ち落とし(笑)。さらに生地を合わせる工程も入ってくる。なかなか大変です。(笑)」

 

FAVORRICでもお買い上げになったお客様から「はじめてこんな素敵な傘に出会うことができました!」という声が届いているんです。

 

新田さん

「うれしいですね。やはり、やれるだけをやった商品がですね、お客さまに喜んでもらえると一番うれしいものですね。」

 

―傘のお手入れとしていちばん大切なことって何ですか?

 

新田さん

「いろいろありますけど、基本的には陰干しできっちり水分を飛ばしてもらうことです。陰干しが一番いいんです。

濡れた状態で傘立てにしまいっぱなしとかはよくないですね。干すとしても陽の出ているところですと、まず色焼けですね。紫外線に晒されるとどんなに堅牢度の高い傘でも、どうしても傷んでしまいます。」

 

傘は年を重ねるほどに表情が変わってゆく

その変化を愛着と呼べるような傘を

−「いい傘」ってどのようなものだと思いますか?

新田さん

「人それぞれに価値観は違うだけに難しいですけど。つくっている側から言わせてもらえれば、自分に合った傘を見つけてもらってそれを大事に扱うことによって、満足感が得られる、そういう傘になれたら、“いい傘”なんじゃないですかね。

最近の傾向で言うと、FAVORRICさんがやられているように『他にないもの』を求める傾向は強くなっている気がします。やっぱり、人が贅沢になったのかな?(笑)他の人とは違うもの持ちたいっていうことなんですかね。

でもね、(それはそれでよくて)自分のものになった方が一番いいんですよね。大事に使ってもらえれば傘も応えてくれると思いますね。日焼けもしますし、壊れたりもするものなんです。

たとえば草木染めの傘をつくったときにですね、1年でも色が変わっちゃう。で、色が変わっちゃったってお店に持ってくる人もいたんですね。

でも草木染めですからそれはしょうがないわけです。

そこで、年々色が変わってゆくのでそれを楽しんでくださいと伝えてもらうようにしたら、今度はお客さんがこんな色になっちゃった!って喜んで持ってくるようになったんですって。で、すごく売上伸びちゃった(笑)。

ですから、欠点も長所ですよね。FAVORRICの傘は草木染めではありませんが、やはり表情は年々変わってゆくので。その過程で愛着が深くなってゆく。

そんな傘が、『いい傘』なのかなと思いますね。」

 

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