アーティストインタビュー vol.03 タカノカツラ
2022/3/11
フェイバリック参加アーティストVol.03
筆先を常に回転させながら着彩することで、 偶然なっていった。絵がこうなりたかった。
絵画自身の思いを表現したドローイングが魅力的な画家、タカノカツラ。
タカノカツラ プロフィール
1977年 横浜生まれ
2001年 女子美術大学卒業
2000年より個展やグループ展などで作品を発表している。
アクリル絵の具を使って絵を描いています。
筆先を常に回転させながら着彩することで、画面に広がりを持たせ「永遠に続く何処か、終わりのない何か」を簡単な形を使って表現しています。
<提供作品>
波と月
メキシコの記憶
私は何者にもならない
風景
ホント、ホント、ウソ
無題
できるだけ自分を入れ込まない、
絵がこうなりたかった、という絵を描きたい
「絵を描く時に、普段気にしていることはあまり思ったように描かないということです。
一応最初こんな絵を描こうとは思っているのですが、描きながらもっとこうしたらいいとか、あんまり自分の意思を出さないように。絵を描きながらあまり自分がそこにいないように。手だけ動かしてゆく。」
「自分の思っていること人間の考えることなんて大したことないと思うんですね。偶然なっていった。絵がこうなりたかった。そこに任せた方がいいものができる気がしています。」
筆の向かう先にまかせ、絵のなりたい方にまかせて、
永遠に続く何処か、終わりのない何かを描いてゆく
筆先を常にくるくると回転させながら着彩し、空間に広がりを持たせた『メキシコの記憶』、『私は何者にもならない』、『無題』、『風景』、『ホント、ホント、ウソ』の5作品。一方、ドローイングでできた波打つ水面に月を浮かべた『波と月』。遠心運動、反復、増殖、共通のテーマは「永遠に続く何処か、終わりのない何か」。
『メキシコの記憶』
「私、昔メキシコに滞在していたことがあって、そのときにメキシコ料理の修行に来ているシェフと知り合ったのですが、彼が日本に帰国してメキシコ料理屋を開くので、メキシコの太陽をイメージして描いてくれと頼まれまして。その時に、何枚か描いたもののひとつです。」
「メキシコってなんか色も太陽が強くて、すべて日に焼けちゃって、全体的に白ちゃけていて、あと遺跡とかもいろいろあって幾何学的で。そんな感じのメキシコを思い出して描いています。」
『私は何者にもならない』
「メキシコの記憶を描いたときにキャンバスの端っこで何かするのって面白いなと思いまして、真ん中ではなく端っこになんかするのって面白いかなと思って生まれたものです。『私は何者にもならない』と『無題』はそうやって生まれた作品です。タイトルは描く前や途中に考えることも、描いた後に考えることもあるのですが、この『私は何者にもならない』に関しては、描いていてもこれなんだろーなー?何にもならないなこの人って感じで。(笑)」
『無題』
「これも端っこで何かしようと思って。強めの色で描きました。ひらめいた感じでした。紫がかった青は好きでよく使っているのですが、なぜかこの時は強めの紫色になりました。ひらめいてこの色でやろうと思って、でも最終的には思っていたより紫色になりました。最初に思っていた方向に行ってはダメだから、今目の前にあるものを大事にした結果ですね。」
『風景』
「私はこのモコモコの形が好きで今でもよく描くのですが、モコモコがずっと永遠に続いているような気がするんです。どっかすごい遠くにあって。なんかどっかの風景を描いているなという印象があるんです。そこはどこかわからないのですが、どこかの風景を描いている。」
『ホント、ホント、ウソ』
「こちらもモコモコなのでどこかの風景というイメージです。ただこれについては嘘つきの感じがして。ホントっぽいことを言ったり、ウソっぽいことを言ったり小悪魔的な感じを受けまして、でも居心地がいいなという。やなやつじゃないんだけど嘘つきというか。たまにスカされる。(笑)でも魅力的。」
『波と月』
「インクを使ってドローイングをしています。このときドローイングで字を書くのが好きで、アルファベットをどんどん書いていたんです。で、アルファベットのAを大量に書いてみたら、だんだん波っぽいなーと思えてきて。で、お月様を描いたというものです。」
この土地で何百年もかけて培われてきたもの、
それを現代だから楽しめる“豊かさ”の形
―最初にFAVORRICから作品提供のオファーがあったときの印象は?
タカノさん
「面白そうだなと思いましたし、ゴミ(=在庫リスクによる廃棄)を減らすという考え方も共感できるなと思いました。あと、絵を描いているうちに前は描いている1枚の絵について考えていたのですが、だんだん次はこういう展示にしようとか、絵を描くのですが、空間で考えるようになってきました。なので絵がおうちのモノになるって近いなと感じまして。」
「ベッドカバーなんかは部屋の中の大部分を占めるわけで、面白いなと思いました。多くの人の目に触れてもらえるというのも楽しみなところです。絵だとそれを目指してきた人しか見られないですが、生活雑貨だといろいろな接点があると思うので。買っていただいた方の生活をちょっとでも楽しくできたらいいなと思います。」
『メキシコの記憶』
アクリル絵具。筆先をくるくると
回転させながら空間に広がりをもたせる。
メキシコの強烈な太陽、焼けと褪せ、
幾何学文様をイメージした。
『私は何者にもならない』
アクリル絵具。筆先をくるくると
回転させながら空間に広がりをもたせる。
何か他のイメージと関連づけられる
ことを拒絶するような強い意志。
『無題』
アクリル絵具。筆先をくるくると
回転させながら空間に広がりをもたせる。
なるべくしてなった強い紫色。
拒絶の意思も感じさせない無題の存在。
『風景』
アクリル絵具。筆先をくるくると
回転させながら空間に広がりをもたせる。
延々とつづくと思わせるような地平線。
どこかで見たようなどこでもない風景。
『ホント、ホント、ウソ』
アクリル絵具。筆先をくるくると
回転させながら空間に広がりをもたせる。
どこか温かみがあり、落ち着きをくれる
場所。けれどときどきウソをつく。
『波と月』
ドローイング、インク。
無数のAを反復することによって
生まれた波打つ海原に
黄色の月が浮かんでいる。