FAVORRIC編集者
2024-06-29
抽象画とは?生まれた背景や種類についてわかりやすく解説します!
近代美術の絵画様式の一つである抽象画。幾何学模様の組み合わせや、何を描いたのかよく分からない線や面の構成、絵の具をぶちまけたようなキャンバスなど、難解でどう見ればいいのか分からず苦手意識を持っている方は多いようです。
とはいえ、抽象画もまた美術であることに変わりありません。美術ファンとしては、理解できるようになれば更に楽しみが広がりますよね。抽象画が生まれた背景、またどのような種類があるのかなど、分かりやすく解説します!
目次
- 抽象画とは?
- 抽象画の種類
- 抽象画は自由な心で自由に鑑賞してこそ楽しめる作品
抽象画とは?
人物や静物、風景などを描いた絵画を『具象画』と言いますが、それに対して目に見えるものではない、画家の心象や衝動などを思うままに描いたものを『抽象画』と言います。
具象画は視覚で得た情報を元に描かれ、テーマ性もはっきりしているため、鑑賞者も、何を表しているのか理解しやすいです。対して抽象画は、画家の心の赴くままに描いているため、作品意図が分かりづらく、時には意図すら存在しないこともあります。そのため、絵画の中にテーマを見つけることが困難に感じることも少なくありません、
このように具象画と抽象画の違いは描いた対象の違いにあります。一見抽象画のように見えるキュビズムの作品も、実際には人物や物体を描いているため抽象画ではなく、具象画に含まれます。
抽象画が生まれた背景
抽象画は20世紀初め頃に生まれた絵画様式です。抽象画が生まれるきっかけになったのは、19世紀後期に起こった印象派の芸術革命で、印象派はその後の芸術のあり方に大きな影響を与えました。
ヨーロッパでは、17世紀から18世紀にかけて、宗教画や肖像画、宮廷の様子を写実的に描くことを重視する写実主義が広まりました。しかし、18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命により、貴族社会から民衆の権利に目が向けられる風潮が生まれました。そのような時代背景の中、庶民の生活や風景を光や色彩の変化を重視して描く印象派が登場しました。
印象派の美術運動により、ヨーロッパにおける美術は大きく変わっていきます。特に後期印象派であるポール・セザンヌは「近代美術の父」と呼ばれ、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックが作った『キュピズム』に大きな影響を与えました。
それまでの遠近法などの概念を取り払い、平面的で簡略化された輪郭、鮮やかな配色、概念的なモチーフといった、写実主義とは正反対の『キュピズム』・『ドイツ表現主義』・『フォーヴィスム』の美術運動が起こりました。そして、それらに影響された画家たちによって、ヨーロッパ各地で同時多発的に、抽象画が描かれるようになりました。
キュビズムとは?特徴や代表的な画家について解説します!
キュビズムは20世紀初頭にフランス・パリで誕生した革命的な芸術運動で、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックによって発展しました。キュビズムの特徴は、モチーフを分解し再構築することで平面性や複数視点の統合を強調する点にあります。この記事では、キュビズムの歴史的背景、代表的な作品とその特徴、そしてピカソとブラックの生涯と功績について詳しく解説します。
抽象画の種類
抽象画と一言で言っても、実は画一的はなく様々な種類があり、奥深い美術様式となっています。抽象画にはどのような種類があるのか、実際の画家と合わせて詳しく解説します。
キュビズム
パブロ・ピカソ『ゲルニカ』のレプリカ
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mural_del_Gernika.jpg), アレンデサラザール通り, CC BY-SA 3.0 *
キュピズムは、人物や物の輪郭が単純化しているとはいえしっかりと描画されており、テーマもはっきりしています。そのため抽象画ではなく、具象画に分類されますが、抽象画に与えた影響は大きく、抽象画への橋渡しをする立ち位置のため、紹介しています。
パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって作られたキュビズムは、従来の単一的な視点からの視覚情報に対し、多角的な視点から見た対象物を解体し、平面上で再構築するという革新的な技法を編み出しました。
『アヴィニョンの娘たち』パブロ・ピカソ
この作品は、娼館が立ち並んでいたスペイン・バルセロナのアビニヨー通りをモデルに描かれました。セザンヌの絵画に大いに影響を受けていたピカソは、この作品でグロテスクに感じるほど平面的で抽象的に人物を表現しています。
『アビニョンの娘たち』がキュピズムの始まりともいえる作品ですが、あまりにも革新的な技術かつグロテスクに描かれているため、最初は友人たちにすら精神状態を心配されたようです。
シャッターに描かれた絵
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Les_Demoiselles_d%27Avignon_(7925004644).jpg), 国内線フライト, CC BY-SA 2.0*
『楽器のある静物』ジョルジュ・ブラック
ピカソが『アビニョンの娘たち』を制作した際、ジョルジュ・ブラックはその革新的な技術に衝撃を受けたと言われています。その後、ピカソとともに共同制作を行うなどして、キュピズムを作り上げました。
ジョルジュ・ブラックは生涯キュピズムの画家として、静物画を多く描きました。『バイオリンのある静物』『ギターのある静物』の他、『テノール記号のある静物』など、楽器や音楽をモチーフにした作品を多く描いています。
※画像はイメージです
純粋抽象絵画
『純粋抽象絵画』は、ドイツ表現主義であったワシリー・カンディンスキーによって作られました。自己の内面を絵画として描く様式のため、『自己表現的抽象』とも呼ばれます。
『コンポジションⅦ』ワシリー・カンディンスキー
カンディンスキーは印象派であるモネの絵を見て、大いに衝撃を受けました。カンディンスキーの絵画は色彩豊かに描かれているものが多いですが、それは計算された配色というよりも、心象風景を表したもの、感覚によるものが大きいようです。
カンディンスキーの代表作『コンポジションⅦ』は、色彩がとても豊かで、様々な幾何学模様や直線と曲線で構成されています。抽象画らしく、本人からテーマの明示はなされていませんが、研究家や評論家たちの中には『洪水・教会・船・剣』などのモチーフに似たものを見つけ出し、『終末』や『最後の審判』を表しているという見方もあります。
※画像はイメージです
新造形主義
新造形主義は、斜線や曲線を使うことを推奨せず、直線・水平・垂直・直角の線と面の組み合わせで、使用する色は三原色に白・黒・グレーの無彩色に限定し、徹底的に無駄を削ぎ落とした画面構成が特徴です。具象画と対比させ、新しい美術、新しい造形を主張した絵画様式です。
『赤・青・黄のコンポジション』ピエト・モンドリアン
ピエト・モンドリアンは『新造形主義』の生みの親である画家です。モンドリアンは新造形主義の技法を「神智学に基づき合理性が高く、秩序と調和の取れた表現」と言っています。
モンドリアンの代表作『赤・青・黄のコンポジション』は、黒いグリッドで区切られた中に、赤・青・黄・白のサイズが違う正方形や長方形が収まっています。シンプルだけど洗練されたデザインは、現代でもファッションや空間デザインなど様々なジャンルに流用されています。
ピエト・モンドリアン『赤・青・黄のコンポジション』
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Piet_Mondriaan,_1930_-_Mondrian_Composition_II_in_Red,_Blue,_and_Yellow.jpg), ピート・モンドリアン, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で*
表現主義抽象画
第二次世界大戦中、ナチス政策から逃れるためアメリカに亡命した抽象画家たちによって確立された絵画様式と言われています。「巨大なキャンバス・意図や趣旨のない絵画・画面に中心がない構成」が『表現主義抽象画』の特徴です。この中でも、更に技法によって以下のように分かれています。
アクション・ペインティング
画家が自身の身体を使い、絵の具やペンキを垂らしたり投げつけたりする技法です。思ったように描けない偶発的な模様ができあがることを目的としています。
カラーフィールド・ペインティング
キャンバスを平面的に塗りつぶす技法です。描くものには明確なモチーフなどを盛り込むことはなく、ただ全面または分割して塗りつぶします。鮮やかな色を使う場合が多いです。
『No.5,1948』ジャクソン・ポロック
ジャクソン・ポロックは、アクション・ペインティングを駆使する画家であり、主に絵の具缶から直接絵の具を滴らせる『ドリッピング』、絵の具を垂らす『ポーリング』という手法を使って描いていました。
『No.5.1948』は、ポロックの代表作で灰・黒・黄・茶・白の絵の具をポーリングで描いた作品です。タイトルの数字に関しては特に意味はなく、むしろ作品に先入観を持たれないよう無意味な数字で作品名を着けている頃に、この作品も制作されました。
作品は2006年にサザビーズ・オークションに出品され、絵画競売として当時の史上最高額の 1億4000万ドル(当時のレートで約162億4千万円)で落札されました。
※画像はイメージです
抽象画は自由に鑑賞しても楽しめる!
抽象画に対して、「何が描いてあるか分からない」「これなら自分でも描けそう」などと感じて、どのように見ればよいのか分からず苦手と思っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、画家が「心のまま正直に表現する」抽象画こそ、鑑賞者も「心の露のままに感じて」鑑賞できる作品ともいえます。
とはいえ、観るべきポイントがないと集中できないという方もいるでしょう。そのような場合には、抽象画ができた背景や、画家や作品の歴史を調べておくのがおすすめです。難解だと気負わずに自分の心に正直に鑑賞するのが抽象画を楽しむコツの一つです!
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