FAVORRIC編集者
2024-06-28
陶磁器とは?窯器の分類とそれぞれの特徴を詳しく解説します
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芸術品として愛好家も多い陶磁器、日本だけでなく世界中で多くの陶磁器が作られています。
芸術品や工芸品だけでなく、日常でもなくてはならない陶磁器ですが、いざ「陶磁器とはどういうもの?」と説明を求められると、詳しく理解せずに使っているかも……と思う方は多いのではないでしょうか。
陶磁器とはどういうものなのか、分類や原料、作り方など陶磁器の特徴を詳しく解説します!
目次
- 陶磁器とは
- 陶器
- 炻器
- 磁器
- 世界中に名産地多数!奥深い陶磁器
陶磁器とは

陶磁器とは、名前にある通り『陶器』と『磁器』を組み合わせた単語です。より詳しくいえば、陶磁器には『陶器・磁器』のほかにも、『土器』や『炻器(せっき)』というすべての『焼き物』が含まれています。
焼き物には、陶磁器の他にも『窯器(ようき)』という名称もあり、こちらはやはり名前が表す通り『窯を使った焼き物』となり、陶磁器とほぼ同じ意味となります。とはいえ古墳時代には土器を野焼きのように焼いており、この時代のものは厳密には窯器とは呼ばないと思われますが、現代では土器も窯で焼くため窯器に含まれています。
以上のように、陶磁器は原料や焼き方などで様々な分類がされています。けれども、これらはあくまで日本における分類となっています。
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土器
特徴
土器は土を成形し素焼きにした焼き物で、日本では古墳時代から作られている、陶磁器の前身とも言える物です。古墳時代前期頃は野焼きのような状態で焼いていましたが、中期に入ると中国から窯焼きの技術が伝わり、より高温で焼けるようになったものが『陶器』や『陶器』と分類されるようになります。
土器の特徴 | 詳細 |
---|---|
原料と焼き方 | 粘土を水で捏ね、成形して素焼き |
焼成温度 | 600〜900度ほど |
特徴 | ・多孔質で吸水性が高い ・コーティングがなく粘土の素材そのままのため、壊れやすい ・水が染み出しやすいため、器物には向かない ・現代ではプランターやタイルなどに使われる |
陶器
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窯の技術が中国から伝わり、土器から更に高温で焼成が可能になって陶器が生まれました。陶器は『陶土』という土成分が多い粘土で作られるため、陶磁器の中でも『土物』に分類されます。
特徴
陶器は、土器ほどではないですが土の成分が多い焼き物なので、産地による土の違いで色合いや風合いに違いが出ます。土の素朴だったり無骨だったりする風合いが人気の高い焼物です。
陶器の特徴 | 詳細 |
---|---|
原料と焼き方 | 陶土と呼ばれる粘土。成分比率はおよそ『長石10%・珪石40%・粘土50%』 釉薬をかけて窯で焼く |
焼成温度 | 800〜1300度ほど |
特徴 | ・多孔質で吸水性はあるものの、釉薬をかけるため染み出さない ・厚みと重みがあり、釉薬がかかっていない部分はザラザラしている ・土の成分が多いため、少し脆く割れやすい ・透明感がなく、叩くとコンコンと鈍い音がする |
主な産地
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信楽
信楽焼といえば、狸の置物が有名ですよね。鎌倉時代中期に始まったとされ、「わび」「さび」の精神を受け継いでいます。
肉厚で荒い土質、表面がブツブツとして耐火性に高いのが信楽焼の特徴です。赤褐色系の「火色」が特徴的で、焼いている時に灰を被ってできた「焦げ」は「灰かぶり」とも呼ばれ、素朴なまだら模様を生み出します。
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美濃
美濃焼の歴史はとても古く、窯と一緒に中国から伝わった須恵器作りから始まっています。美濃焼にはこれと決まった統一されている様式がなく、技法は15種類と多様。逆にそれが美濃焼の特徴ともなっています。
15種類ある中でも、基本とされている4種類があります。
- 黄瀬戸:黄土色の地色に植物の文様を描き、緑の斑点を入れるのが特徴
- 瀬戸黒:光沢のある深い黒色で色付けされ、渋さが人気
- 志野:乳白色の器に模様が入っている。日本人が初めて作った白色の焼き物と言われている。志野の中に更に分類がある
- 織部:歪みのある自由な形、鮮やかな色合いや柄で、安土桃山時代に生み出された革新的な焼き物。こちらも形や模様でいくつか分類がある
この他、天目・染付・赤絵・青磁・鉄釉・灰釉・粉引・御深井・飴釉・美濃伊賀・美濃唐津があります。
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和食のテーブルセッティング。正しい配膳の仕方や基本的な食器を解説します。
炻器
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『陶磁器・陶器・磁器』に比べて、『炻器』は耳慣れないという方も多いのではないでしょうか。炻器とは、陶器と磁器の中間の性質を持つ焼き物で『半磁器』とも呼ばれます。英語では『ストーンウェア』といい、明治時代から炻器と呼ばれるようになった比較的新しい名前です。
特徴
陶器と磁器の中間であり、半磁器と呼ばれてなんだか中途半端な印象を受けてしまいますが、実際のところは両方のいいところを受け継ぐ焼き物ともいえます。
炻器の特徴 | 詳細 |
---|---|
原料と焼き方 | 鉄分が多い粘土を使った焼き物 釉薬は使わず、素材の質感を出しているものが多い |
焼成温度 | 1200〜1300度ほど |
特徴 | ・マットな質感でシンプルなものが多い ・釉薬は使っていないが、吸水性は低い ・耐熱性があり、レンジやオーブンに使えるものも多い ・叩くと陶器よりも高めの音がする |
主な産地
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シュタインツェグ(ドイツ)
ドイツのライン川沿い、各地で生産されたために『ライン炻器』とも呼ばれています。炻器作りとして始まったのは9世紀、まだ『ドイツ』として国が成立していない時代まで遡ります。
現在では柄が描かれたものも多いですが、中世では緻密なレリーフが施されているものもあり、特徴的で見事です。
磁器
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陶器とは違い、『陶石』と呼ばれる素材を使って製造します。土より石の成分が多いため、『石物』とも呼ばれます。日本における磁器作りは江戸時代に始まったとされています。土器や陶器に比べれば歴史的には新しい方だと言えるでしょう。
特徴
陶器とは真逆とも言えるのが磁器の特徴です。焼き上がると白くなるので発色が良く、模様や絵付けをするのに向いています。素材や絵付けの色を活かすために、透明な釉薬を使うことが多いです。
磁器の特徴 | 詳細 |
---|---|
原料と焼き方 | 陶石と呼ばれる粘土。成分比率はおよそ『長石30%・珪石40%・粘土30%』 2〜3回にわけて焼成が行われる |
焼成温度 | 1200〜1400度ほど |
特徴 | ・熱で素地の中のガラス質を溶かし、滑らかな表面になる ・吸水性は0%で硬質 ・厚みは均等で薄い。熱伝導率が高く、熱しやすく冷めやすい ・叩くとチンと高い金属音に似た音がする |
主な産地
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伊万里
伊万里焼と有田焼は、たびたび混同されることがあります。江戸時代には肥前国(現在の佐賀県と長崎県)一帯で作られた磁器は伊万里港に運び込まれ、そこから輸出が行われていました。そのため、産地はどこでも伊万里港に集められた物はすべてまとめて『伊万里焼』と呼ばれていました。伊万里焼と有田焼として産地に分けて呼ばれるようになると、『古伊万里』は江戸時代に作られた有田焼とされるようになりました。
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有田
有田焼は3つの様式に分けられます。
- 古伊万里様式:色とりどりに染付したところに『金襴手』と呼ばれる絢爛豪華な装飾が行われる
- 柿右衛門様式:余白を活かした、日本画のような絵付けが特徴
- 鍋島様式:諸大名への献上品として作られたため、緻密で美しい絵付けがされている
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景徳鎮(中国)
景徳鎮は、世界でも人気が高い中国の磁器です。景徳鎮の始まりは9〜10世紀あたり、この頃はシンプルな青磁や白磁を作り、『昌南鎮』と呼ばれていたようです。現在の景徳鎮はきれいな白色が特徴で、4つの様式に分かれます。
- 青白磁:白磁にかかった釉薬が薄く青みがかっている
- 白磁:純白が美しい磁器
- 青花:白磁にコバルト顔料で『鳳凰・龍・花・山川・建物・人物』などが絵付けされている
- 五彩:白磁に赤・緑・黄・青・黒の釉薬で、青花同様の題材で絵付けされたもの
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マイセン(ドイツ)
中国や日本の白磁に魅了された国王の指示により、1709年に開発されたのがマイセンです。どことなくオリエンタルな図柄が多いように感じるマイセンですが、元々中国や日本の磁器を見本にしていたとなれば納得ですね。特に初期のマイセンは、日本や中国の図案を映したものもあったよう。
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ストーク・オン・トレント(イギリス)
ストーク・オン・トレントは、世界最大級の陶磁器メーカー『ロイヤルドルトン』、イギリス4大名窯『スポード』、日本でも大人気の『ウェッジウッド』、かつて王室御用達だった『ミントン』(2015年買収後に廃止)など、イギリス国内でも有数の磁器メーカー発祥の産地です。
世界中に名産地多数!奥深い陶磁器
陶磁器といえば、骨董品を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。けれども、陶磁器は飾って楽しむだけではなく、普段から使って楽しむこともできる美術品と言えるでしょう。現在でも名品は数多く作られています。
陶磁器の成り立ちや産地など、詳しく知ることで、骨董としてだけでなく普段使いするものとしても趣を感じ、食事やティータイム、インテリアとしてなど楽しむことができそうです。最初はハードルを上げず、親しみやすいところから陶磁器にチャレンジしてみませんか?
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