FAVORRIC編集者
2024-06-27
フレスコ画とは?歴史や技法、名画について解説します!

ヨーロッパの大聖堂や教会に描かれた、壮大な天井画や壁画。
神聖な雰囲気に惹かれ、1度はこの目で観てみたいと憧れる方も多いでしょう。
それらの多くは「フレスコ画」と呼ばれる技法で描かれています。
天井画や壁画はイメージできても、どのような技法なのかは知らない方も多いはず。
ここでは、フレスコ画の歴史や技法、代表的な作品をご紹介します。画法が分かるとアートはより楽しくなるので、ぜひご覧ください。
目次
- フレスコ画とは?
- フレスコ画の歴史
- フレスコ画の技法
- フレスコ画の名画
- フレスコ画を知るとより西洋美術がわかる
フレスコ画とは?

フレスコ画は、壁にモルタルを塗り、乾かないうちに顔料で色をつけた絵画のこと。
塗りたての漆喰の上に描くため、イタリア語で「新鮮(フレッシュ)」という意味がある「フレスコ」と呼ばれるようになりました。
フレスコ画は、モルタルに含まれる石灰の「炭酸化作用」を利用した手法です。
モルタルが乾かないうちに顔料をのせると、色素がモルタルに閉じ込められます。
長い間発色を保てるため、数百年、数千年前のフレスコ画が現在でも残っています。
フレスコ技法ではモルタルが乾かないうちに作業を進めるため、制作を計画通りに行う必要がありました。
このような制作スタイルが合わない画家もいましたが、より効率よくクオリティの高いフレスコ画を描くためにさまざまな方法が編み出されています。
フレスコ画の歴史

「フレスコ画があるのは、ヨーロッパの大聖堂や教会だけ」と思っている方も多いはず。
実は、かなり昔から多くの地域で見られる技法なのです。
フレスコ画の歴史を解説します。

フランス・ラスコー洞窟壁画
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lascaux_painting.jpg), PD*
先史時代
先史時代、およそ2万年前にはフランスのラスコー洞窟やスペインのアルタミラ洞窟で壁画が描かれています。
これらの洞窟壁画は、赤土に動物の脂などを混ぜた顔料で描かれており、これに洞窟内の石灰質と湿気、顔料が結合・結晶化して色素が定着し、現在に残っているのです。
フレスコ技法が確立していたわけではありませんが、旧石器時代の人類と自然界の仕組みが偶然合わさって生まれたフレスコ画の祖先ともいえる壁画です。

古代
フレスコ技法は、紀元前2000年頃には確立していたとされています。
特に古代ギリシャ・ローマで盛んに制作されていました。
特に古代ギリシャ・クレタ島のクノッソス宮殿や古代ローマの「カタコンベ(地下の共同墓所)」のものが知られており、 イタリア・ポンペイ遺跡にも、約2000年前のフレスコ画が鮮明に残っています。
日本では奈良県明日香村の高松塚古墳・キトラ古墳で発見されました。
フレスコ技法はシルクロードからアジア東部に伝わったといわれており、日本はその終着点です。

ジョット・ディ・ボンドーネ『キリスト降誕』
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Giotto,_Lower_Church_Assisi,_Nativity_01.jpg), Giotto di Bondone, PD*
中世
中世のフレスコ画は、キリスト教の教会建築に描かれたものが多いです。
特にイタリアでは、乾燥した地中海性気候にも適していたフレスコ画が盛んに制作されました。
中世後期には、より自然な絵画を描ける「ジョルナータ」という手法が開発されました。
それまで主流だった「ボンターテ」は、水平にモルタルを塗って下から上に描いていく方法でした。
この方法では横長の帯状に1日の作業範囲をとるため、作業日の違いで不自然なつなぎ目が生まれてしまいます。
ジョルナータは、1日の作業範囲を画中の人物や背景を基準に決める方法です。
「今日はこの人物」「明日はここの背景部分」と描いていくため、より自然な絵画空間を生み出せるようになりました。

ラファエロ・サンティ『アテナイの学堂』
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Raffael_058.jpg), Raffaello Santi, PD*
ルネサンス
14~16世紀、ヨーロッパではイタリア・フィレンツェを中心にルネサンス文化が花開きます。
数多くの教会や礼拝堂、大聖堂が建てられ、フレスコ画も盛んに描かれました。
「ルネサンスの3大巨匠」と呼ばれる次の画家は、いずれもフレスコ技法での天井画・壁画制作に取り組んでいます。
- レオナルド・ダ・ヴィンチ…『最後の晩餐』
- ミケランジェロ・ブオナローティ…システィーナ礼拝堂天井画、『最後の審判』など
- ラファエロ・サンティ…『アテナイの学堂』など
このうち、ダ・ヴィンチとミケランジェロの作品は後ほど詳しくご紹介します。
同じころ、現在のオランダ・ベルギーであるネーデルランドでは、ファン・エイク兄弟が油絵の技法を確立させました。
ルネサンス後期の油絵の普及によって、フレスコ画は徐々に下火になっていきました。

ディエゴ・リベラによる国立宮殿の壁画
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Murales_Rivera_-_Markt_in_Tlatelolco_1.jpg), Diego Rivera, CC BY-SA 3.0*
近代以降
フレスコ技法を使った近代以降の画家としては、ディエゴ・リベラがよく知られています。
メキシコで起こった芸術運動「メキシコ壁画運動」の中心人物です。
メキシコの国立宮殿には、450平方メートルもの大規模なフレスコ画が残っています。
現代では、絹谷幸二が高く評価されています。
大阪市北区には「絹谷幸二 天空美術館」があり、多くのフレスコ画作品を見ることができます。

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フレスコ画の技法

フレスコ画の技法は、主に次の3つです。
- ブオン・フレスコ
- フレスコ・セッコ
- ズグラフィート
3つの違いと特徴を解説します。

ブオン・フレスコ
ブオン・フレスコは、最もポピュラーで耐久性がある技法です。
壁に塗ったモルタルが乾かないうちに顔料で色をつけます。
ブオン・フレスコは、消石灰(水酸化カルシウム)の「炭酸化作用」を利用しています。
モルタルに含まれる消石灰には、水分や二酸化炭素と結合して結晶化する性質があります。
そのため、硬化しないうちに水だけで溶いた顔料をのせると、顔料を取り込みながら結晶化するのです。
このように、ブオン・フレスコでは絵画が壁と一体化するように制作します。
固着剤(バインダー)を使わないため発色がよい一方、使用できる顔料の種類が少ないのがデメリットです。
フレスコ・セッコ
フレスコ・セッコは、既に乾いたモルタルの上に色をつけていく技法です。
乾燥したモルタルに描くため厳密にはフレスコ画とはいえず、発色の良さや耐久性も劣りますが、ブオン・フレスコより使える顔料の種類が多いというメリットもあります。
そのため、2つの技法を併用することでと表現の幅が広がりました。
宗教画では、重要度の高い人物は耐久性が高いブオン・フレスコで、そのほかはフレスコ・セッコでより表現を凝らしている作品が見られます。
フレスコ・セッコは、顔料に固着剤を混ぜる必要があります。
固着剤には卵やウサギの皮で作った膠、カゼインなどが使われました。

ズグラフィート
ズグラフィートは、色の異なるモルタルを重ねて塗り、転写した下絵を削る技法。
宗教画よりも、建物の装飾・インテリアなどによく用いられました。
フレスコ画が盛んに制作されたルネサンス期、他の技法より安価で型紙を使えば簡単に描けるズグラフィートは、画家ではない市民も楽しんでいたといわれています。
イタリア発祥の技法ですが、スイスやオーストリア、ベルギーなどでもよく見られます。
特にベルギーでは色彩豊かなズグラフィートが作られ、人々の目を楽しませていました。
フレスコ画の名画

ヨーロッパの美術が花開いたルネサンス期には、現在でもよく知られるフレスコ画が数多く誕生しました。
ルネサンス期に描かれたフレスコ画を3作品ご紹介します。

*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Leonardo_da_Vinci_(1452-1519)_-_The_Last_Supper_(1495-1498).jpg), Leonardo da Vinci, PD*
最後の晩餐:レオナルド・ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、イタリア・ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ修道院に描かれた壁画です。
ダ・ヴィンチ唯一のフレスコ画に描かれているのは、新約聖書の「ユダの裏切り」。
遠近法を駆使した構図は、鑑賞者がその場に居合わせたような臨場感を生み出しています。
『最後の晩餐』はテンペラ画にも分類されます。
フレスコ・セッコで描かれていて、顔料の固着剤として卵を使っているからです。
ブオン・フレスコに必要な計画的な制作スタイルは、ダ・ヴィンチに合わないものでした。
そのため『最後の晩餐』は傷みが激しく、1999年に修復が完了したものの制作当時の状態には戻せなかったといわれています。

システィーナ礼拝堂天井画
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sistine_Chapel_ceiling_photo_2.jpg), Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni, PD*

『最後の審判』
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Last_Judgement_(Michelangelo).jpg), Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni, PD*
システィーナ礼拝堂天井画:ミケランジェロ・ブオナローティ
バチカン宮殿にあるシスティーナ礼拝堂には、ミケランジェロ・ブオナローティの天井画と『最後の審判』があります。
天井画は1508~1512年、『最後の審判』は1535~1541年に描かれました。
天井画は、彫刻家だったミケランジェロにとって初めてのフレスコ画です。
旧約聖書の『創世記』や『アダムとイヴ』など9つの場面とともに、丸天井を支える「ペンデンティブ」には7人の預言者と巫女が描かれています。
『最後の審判』は、主祭壇の後ろの壁全体に描かれた作品。
1370cm × 1200cmととても大きく、世界の終わりにキリストが再臨し人々の魂を裁いている場面が壮大に表現されています。

ジョット・ディ・ボンドーネ『マリアの神殿奉献』
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Presentation_of_the_Virgin_-_Capella_dei_Scrovegni.jpg), Giotto di Bondone, PD*

ジョット・ディ・ボンドーネ『ユダの接吻』
*出典: [Wikipedia](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Giotto_-_Scrovegni_-_-31-_-_Kiss_of_Judas.jpg), Giotto di Bondone, PD*
スクロヴェーニ礼拝堂壁画:ジョット・ディ・ボンドーネ
イタリア・パドヴァにある『スクロヴェーニ礼拝堂壁画』は、ルネサンスの始まりを象徴する作品です。
聖母マリアとキリストの生涯を描いた壁画で、鮮やかなブルーと金色を基調とした荘厳な空間が堂内に広がっています。
作者のジョット・ディ・ボンドーネは「西洋絵画の父」とも呼ばれる画家。
ブオン・フレスコの「ジョルナータ」法を開発しました。
この作品が「ルネサンスの始まり」といわれるのは、怒りや悲しみの表情を浮かべた人々をこのうえなく自然に描いているため。
ジョットはその高い表現力で、絵画に感情をのせることに成功したのです。
フレスコ画を知るとより西洋美術がわかる
フレスコ画の歴史や技法、代表的な作品をご紹介しました。
キリスト教の大聖堂や教会を何百年も彩り続けているフレスコ画。
フレスコ画を鑑賞するときは、この記事でご紹介した歴史や技法にも思いを馳せてみてください。


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